【サークル理論】と言っても、オートバイの 解説書や物理工学書にも出てこない言葉ですから誰も知らない筈です。
( GRA 用語/ GRA 造語です )
しかし、その内容や本質はライダーなら殆どの人が理解できる筈です。
つまり、サークル理論とは、オートバイを一定の速度(アクセル開度)に保ち一定のバンク角で走らせると、オートバイは一定の半径の円(サークル)の上を安定して走り続ける!
という理論です。
(とても簡単な理論ですから、もしかするとライダーでなくても理解できる方は多いのではないでしょうか )
では、実際に試してみましょう!
充分な広さのある平滑な舗装路面を選び、走行して描く円(サークル)の中心とする箇所にパイロンなど目印になるモノを置き、その周りを右回転でも左回転でも好きな方向に旋回してください。ただし、ブレーキは一切使わないで走行します。
どうでしょうか ・・? 毎周同じ箇所をタイヤが通るでしょうか ?
旋回に慣れてきたら、タイヤが通る路面にチョークなどで目印をつけて同じ場所を毎周通れるかチェックしてみましょう。(
ブレーキで調整するのは一切無しです )
本来、同じ円(サークル)の上を走り続けるのはオートバイの基本特性ですから、周回する度に大きく外れてしまう方の場合はライダーが余分な操作をしていると言えます。
えっ? 同じ円の上を走れるようになったのですか?
素晴らしいですね! オートバイ本来の能力を邪魔しないという大切な感覚が身に付いたのかも知れませんね。 では、慣れた方は片目あるいは両目をつぶって走行してみましょう!
( 必ず周囲の安全確保の上で! )
急に大きく姿勢を乱してしまったとしても恥じる必要はありません。
安定した周回をしたと思っている時にもライダーが無意識に細かな修正をしていたというだけの事です。更に上のレベルへ上達できる近道が見つかったのですから。
どうでしょう? 全くオートバイ任せに走らせる時に感じる不安感と同時に、オートバイが自主的に走る力強さや頼もしさを感じられたでしょうか?
それが、オートバイが備えている大きな能力ですし、その能力を活かした走法を身につける“ヒント”です。
では、サークル理論(練習)の応用を紹介しましょう。
ある程度練習すれば、厳密に同じ円(サークル)でなくても構いません、ほぼ安定して走るのに慣れてきた方にお勧めします。
最初に用意した回転中心とは別に、7m以上離れた箇所にもう一つ回転中心の目印(パイロンなど)を置きます。(9〜12m程度がお勧めです)
そして、左右どちらかの回転方向を決めて、先ず一方の目印を中心に安定した円(サークル)を描くように走行します。そしてほぼ安定した円(サークル)が描けたならば、加速してそのサークルから脱出してもう一つの目印を中心にした円(サークル)を描くように走ります。
この時、回転方向は一定方向でブレーキは一切使用せず、バンク角もほぼ一定に保ち、アクセル操作だけで二つの円(サークル)を連続して描けるようにしましょう。
そうすると、きっと色々な事が理解できる筈です。
例えて言えば、一つの惑星の周りを安定した周回軌道で周回していた宇宙船があったとして、ロケット再点火して周回軌道を離脱して別の惑星へと向かい、その惑星の直前でロケットを逆噴射して狙った周回軌道に無事に入るためには、ロケットの点火タイミングや逆噴射のタイミングはとても限られた範囲にあるのと同じ事です。
つまり、バンク角を保ちつつ別のサークルへと向かいアクセルを開けるポイントは限定された箇所にあり、次のサークルへ安定して進入するためにアクセルを閉じるポイントも限られた地点にあるという事が理解できるでしょう。
これらの特性が見えてきた時こそ、オートバイ本来の特性に気付く時で、オートバイと親密な会話を達成する第二段階に到達したと言えます。
走行して描く二つの円(サークル)を空から見たとしましょう。
サークルを離脱して次のサークルへ向かうにはサークルのどの地点でアクセルを開けると良いか? 角度にして何度の位置が良いか探ってみましょう。
アクセルオフにして次のサークルへと減速を開始する地点も同様に考えてみると、オートバイの特性の理解に役立ちます。
では、更に次の応用練習へと向かいましょう!
二つの目印(回転中心)はそのままに、一つを右回転に、もう一つを左回転にします。
一方のサークルを描いた後に次は逆の回転方向で安定したサークルを描き走行します。
どうです? 結構難しいと感じたり、意外とやりやすいと感じたりするでしょう。
左右への切り替えしが入る分だけ難しさは増えますが、切り替えしという絶好の加重タイミングでコントロールがし易い分だけやりやすいと感じる人も居るでしょう。
( もちろん! ブレーキは一切使用せず、アクセルとバンクコントロールのみです )
ここでのポイントは、必ず一周以上は安定したサークルを描いた後に次のサークルへ向かう事と、安定する範囲内でより小さな半径のサークルを描けるようにする事です。
そして、どの地点でサークルから離脱し、どの地点でサークルに入るのが最も自然で楽に走れるかをチェックしましょう!
きっと、サークル上のその二つの地点はあまり離れていない事に気付くでしょう。
では次の段階へと進みます。
今まで一回転していたのを止め、安定したポイントでサークルに進入したら、すぐに離脱すべき地点でアクセルを開けて次のサークルへと向かってみましょう。
ごく短い期間ですが、オートバイが本来求めている安定した円(サークル)の上を走行している事を感じつつ走行できるでしょうか?
実は、これが 8の字走行 、オートバイの基本練習 と言われる走法の基本です。
ターンに進入する前に、オートバイが自然に描く円(サークル)の大きさを決め、それに合わせてバンク角やアクセル開度、進入ポイントを守ってやった時こそ、オートバイが持っている能力を最大に活かせるし、円(サークル)が事前に設定できるという事は脱出速度を設定できるという事で、本来の
8の字走行 には様々な重要な要素が含まれて(必要になって)いるのです。
ところが、一般に行なわれている 8の字走行 は、ただ 右ターンと左ターンを繰り返す練習に他ならず、しかも
アクセルやバンク角コントロール とは別に ブレーキコントロールという要素が加わり、様々な事を整理しないままに一挙に慣れるまで練習している例が殆どのように見受けられます。
今回、サークル理論を最初から読み、理解をしつつ実際に走行を繰り返し、様々な会話をオートバイと試みながらここまで来た方は既に理解できた事でしょう。
8の字走行 は 難易度が高い! でも いつかは攻略したい テーマ である事が。
この様に 【サークル理論】はオートバイのターン(旋回)のマスターには欠かせない理論で、90°ターンを始めとして
180°ターン、30°ターンなど様々な場面で基礎となる大切な理論です。
ここでは紙面の関係もあり充分な解説は出来ませんが、様々な場面でこの理論を応用して、あなたなりにオートバイ本来の能力を活かした、安全性や走行レベルが高く楽しいライディングを実現させていきませんか。
|