私たちを取り巻く世界では、ほぼ全て物の運動(移動や静止、落下など)には運動(物理)法則が働いており、オートバイもこの物理法則に従った動きをします。
時として、ライダー達は「勇気」とか「気合」で乗りこなそうとしたり、逆に「心配」や「恐怖」によってオートバイの動きを抑え過ぎたりしますが、これらはどちらも“法則知らず”という点では共通しているとも言えます。
今回は、オートバイにとって大切な運動法則:【 サークル理論 】を説明します。
【 サークル理論と180度ターン 】
この原理は、「イベントリポート」で解説している通り、オートバイの走行ラインは常に円弧を描いており、その円弧の半径は速度とバンク角によってほぼ決まるという事です。
そして、バンクしたまま減速を行なっている場合には 円弧の半径が徐々に小さくなる曲線 = 「クロソイド的ライン」の走行ラインを描き、同様にバンクしたまま加速を行なう場合にも 円弧の半径が徐々に大きくなる曲線 = 「クロソイド的ライン」を描きます。
では、このサークル理論を180度ターンの場合で示すと下図の通りとなります。
上図の「基本サークル」とは、ターン中の減速によって最も低くなった速度を保った場合に、オートバイが自然に描く走行ラインです。(運動法則により、一定の速度、一定のバンク角では一定の円を描きます)
別な言い方をすれば、想定する最低旋回速度が高い場合には「基本サークル」の半径を大きくする必要があり、逆に速度が低い場合には半径を小さく想定する事になります。
また、「クロソイド的ライン」とは、一定のバンク角(またはバンク角変化)と一定の減速度を保った時に描かれる走行ラインです。
別な言い方をすれば、一定のバンク角と減速を行なう限り、そのラインはターン進入開始した地点とその時の速度によって決まり、進入してからライン変更を試みる事は運動法則に抵抗する危険な行為とも言えます。
最後に、上図では「基本サークル」と「クロソイド的ライン」が短い区間しか接しておらず、基本サークル上をもっと長く走るようなラインになっていない事の説明をします。
これは、オートバイが最も安定して効率の高い走行ラインだからです。
オートバイはタイヤと路面との間に働くグリップ力(摩擦力)に依存していて、このグリップ力が大きい程に安定性や安全性が高くなる事は理解してもらえると思いますが、このグリップ力は減速度(減速する強さ/円弧半径にも関係)や加速度(加速する強さ)が高い程に高まります。逆に、減速も加速も行わない「基本サークル」(定常円)の上ではグリップ力は多くは期待できません。
だから、グリップ力を有効に活かして、安定した安全な走行を想定する場合には、上図のようなラインになります。
(基本サークル上をノーブレーキで走る練習は、サークル理論の確認と実践、グリップ力やブレーキに頼り過ぎないライディング練習に最適ですが、この件は別の機会に述べます)
【 サークル理論の応用】
上図は 180度ターンの場合での 「サークル理論」の応用ですが、実際の公道走行でも場面に応じて様々な大きさの「基本サークル」を想定して、それに合わせた「クロソイド的ライン」にオートバイを載せることによって、安定性や安全性の高いライディングに近づける事ができます。

ここでは、今回の GRA講習 で制作した「タイムトライアルコース図」
を使って説明します。
スタート直後、2本のパイロンで作られたセクション だけを抜き出すと
右図のようになり、この時、スタート位置から最初のパイロン(〇印)
までの距離は 約 18mほどですから、最初のパイロンでの 左旋回(基本
サークル)は中程度の大きさで、次のパイロン左旋回も同程度、そして
次の左旋回は 曲がり角も少ないので基本サークルも大きめに想定でき
ます。
右図のセクションを、ターン別に、「基本サークル」とクロソイド的
ラインを書き入れると下の図のようになります。

ターンに合わせて、「基本サークル」を 3個配置するのが一般的で、その大きさは 想定する最低速度に合わせて、位置はターンをする角度に合わせて設定します。
普段は、オートバイの特性を深く理解しないまま、右へのターン、左へのターンを行なう事も多いと思いますが、この「基本サークル」というオートバイの自然な運動法則に沿った考え方をすれば、もっとストレスの少ない、安定した安全なライディングになるでしょう。
さて、初めて走る道路やコースで、上図のように「基本サークル」と「クロドイド的ライン」が見えるようになれば十分に上級レベルですが、下図の通り、更に別の案も提示します。
興味のある方は、是非、その目的や狙い、走行ラインなどを想像してみてはどうでしょうか。
では、また次の機会に。
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