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  友人のVTR、妖怪ガレージ・整備記録(1)
   "Yokai" Garage, Honda VTR
  complete maintenance record
 "part1"


先週末、以前から友達のバイク・VTR250 の整備を提案していたが、友達の体調も良くなり、温かくなり、奥さんの許可も無理やり取り付けた様なので、久しぶりのガレージで整備をする事に。

行なった作業は、日頃から僕自身が行なっている通常の作業。 ただし、一般的整備の常識とは異なっている点もある。
オーナーには異なっている点については一つ一つ説明して、理解を得た上で一緒に作業を行なったので、通常よりも時間が掛かった点も。

 作業開始   : 2014年 3月22日 11:30
 作業第一段階 : 友人に僕が所有する VTR250(同年式車)に試乗してもらい、
         判断や間隔の基準になる点を幾つか得てもらう。


ホンダVTR 分解整備_4

■ フロントフォークの整備 ■ 


 

フロントフォークの整備は完全分解以外にないので、取り外した後、外部についた汚れを全てクリーニングする。

次に、分解&組立を行なう専用のパレットを用意して、分解した全てのパーツを展開図よろしく並べていく。 ここから、汚れを嫌う作業になるため、一旦手を洗う。

分解したパーツについたオイルや汚れを綺麗なペーパータオルで取り除き、交換する上下 2個あるガイドブッシュ(これは 精度良く抵抗少なくフォークを作動させるための部品で、摩耗するように作られているため 要交換部品)と、オイルシールとダストシール(両方共に、ゴム製の部品のため定期交換部品、1万q 程度が交換目安)を交換し、組立てに入る。

組立時には、作動するフォーク部品(インナーチューブ)が正しく中心に取り付けられる事が大切。 そのため、インナーチューブとガイドブッシュを取り付けるまで、フォーク下端にある取り付けボルトは仮締めにしておき、インナーチューブとガイドブッシュを取り付けた後、取り付けボルトを緩め、フォークを直立させた状態でストロークさせたりして“ 芯出し ”を行なう。 “ 芯出し ”作業は、ダンパー減衰力調整機構のついたフォークの場合には特に慎重に行なうべきだが、調整機構の無い正立式のフォークでも不可欠の作業だ。

芯出しを行なった後、固定ボルトを規定トルクで締めた後、オイルシールとガイドブッシュの装着作業に。 良く知られた作業の一つだから、フォークトップ部にラップを被せてシールのリップ部に傷をつけないのは当然の事。

それ以外に、装着するそれぞれの部品は金属と接触する訳だから、金属とゴム部品との間での接触抵抗を減らして無駄な摩耗を防ぐため、金属とゴムとの間に適した専用の潤滑剤を十分に塗布してから組み立てる。

次に、フォークオイルの注入作業。
サービスマニュアルには、460t または オイルレベル 105o などと記載してあるが、これらは作業の参考程度に留める。共に、フォーク組立工場で組立をする際の基準値であって、全て新品の部品で組み立てる場合以外には、指定通りにしても新車時と同じにはならないためだ。

一番大切な事は、オイルレベルを o単位で厳密に管理する事ではなく、実際に走った場合に“ 適正な残ストローク値 ”になるかどうかだ。 “ 適正な残ストローク値 ”にならなければ、オイルレベル管理作業もエア抜き作業も無意味であり、実際に走行して“ 適正な残ストローク値 ”になるように追加調整を行なうのが(妖怪流では)当たり前の適正な作業だ。

・・実際、エア抜き作業とオイルレベル管理を厳密に行なった後で、残ストロークの確認を行なって、t単位で フォークオイルの 追加や抜き取り作業を行なうのが(妖怪にとって)日常業務だ。

ちなみに、VTR250 の 新車時の 残ストローク量は、ターン時に適正なトレール量(前輪の方向安定性を左右する)が確保できない事は周知で、20o以下と危険なレベルであり、(妖怪流の)適切な 残ストローク 40o に合わせる事をオーナーに説明して承諾を得る。
という事で、ストローク量を 20o減らすためには 41oのインナーチューブ外径の場合、 2.05 p × 2.05 p × π × 2 p の計算から 約 26 t オイルを追加する必要がある。 その場合、オイルレベルの変化量は、インアーチューブの内径を 37 oとして、26 t ÷ 1.85 p ÷ 1.85 p ÷ π の計算から 約 24.6 o となるので ・・・ オイルレベルは 105 o - 25 o で 80 oとして調整を行ない、トップキャップを締めて作業完了。

また、フォークオイルの交換時期について一言。
オートバイを構成する部品は、金属、ゴム、オイル、樹脂の四つあり、その中で ゴム と オイル は 最も早く損耗する部品。 エンジンオイルを 3000 q程度で交換するように、フォークオイルも 3000 qか それ以下で交換するのが、部品(オイル)の寿命と実際のハンドリング面からも常識。( 妖怪のお勧めは、1000 q以内、それ以上だと劣化が表れる )

ただし、フォークオイルの交換作業を正しく行なっている店は少ない。 前記の通り、サービスマニュアル通りに行なったとすれば、それは 新車時とは異なった状態にしている事であり、本来は “残ストローク”の調整も行なう必要があるからだ。

 



■ ステム周りとステムベアリング ■ 


 

ステムベアリングは必ずグリスで潤滑されている。 グリスとはオイルであるから、定期的にオイル(グリス)の交換作業は当たり前である。
また、数多く使用されているベアリングの内、最も本来の使用用途から外れた使用のされ方をしているベアリングは オートバイの場合には 何か所かあるが、ステムベアリングのその内の一つだからこそ、定期的な整備は必要になる。

グリス(オイル)の交換作業は簡単だ。
清潔なペーパータオル等でベアリングのローラーを回転させながら拭き取り、同じくローラーを回転させながら新しいグリスを隅々に塗布していくだけ。 またグリスの種類は、金属同士の潤滑であり荷重もさほど高くないため、一般的な“ ウレア系グリス ”を使用する。

オーナーの車両のベアリングは、以前にローラーベアリングタイプへと換装されていたが、どういう訳かレース面にバリ(突起)が発生していた。しかし、流石に交換部品はストックしていないし、時間短縮のためにバリを研磨して減少させて組立てに入る。
このステム周りの組立てで一番大切な事は、フリクション(摩擦)の調整だ。 ガタが出てはいけないが、締め付け過ぎてフリクションが過大になり動きが悪くなってもいけない。

また、ステム周りのクラッチやアクセル、電装系のハーネスによる無駄なフリクションを低減させる作業も、本来ならば不可欠だ。 今回の場合には(ほとんどの市販車もだが・・)左へハンドルを切る方向で無駄なフリクションが過大になっている事をオーナーにも認識してもらい、それを低減させる方策の許可を得る。
殆ど無くす方法はあるが、そのためには ケーブルやハーネスの取り回しの変更作業が必要になるため、その作業は次回に行なう事にして、簡易的にブレーキホースなどを固定(クリップ)している部品を切断除去して、フリクションの少ない取り回しへと変更を行なう。 これだけでも ハンドリング(ハンドル操作感)が向上するのは間違い無い。

では、アンダーブラケット(通称:三つ又) と トップブラケット、ベアリングの組立に入る。 ここの締め付けは 二つの段階に分かれている。 一つは、ベアリングのクリアランス(隙間)を直接調整する為の締め付け部で、もう一つは アッパーブラケットを通して固定する箇所だ。

最初の締め付け部では、ブラケットだけを組み付けた状態で、指先でステムを回転させつつ敏感にベアリングに荷重が掛かり、ガタが無くなる点を正確に探り出します。 そして、その箇所よりもホンの少しベアリングに隙間が出るように、締め付けを少し戻してから、最後にアッパーブラケット上部からのナットを締めつけます。
ここで注意すべき点は、サービスマニュアルの指示の通りには行なわない事だ。 指示では 10.5 Nm という大きな値になっているが、これを守っていては 適切なハンドリングを得られない経験をしているからだ。 それに、他の友人の車両のメンテナンスの機会に、新車購入から2〜3年、無事故・無修理のホンダ車で、ベアリング部のレースに打痕があるのを現認していて、明らかに オーバートルク(締め付け過ぎ)の結果と思われるのを見ている経験もあっての事だ。

サービスマニュアルは多いに参考にすべきだが、個々の部品の目的や性格を考えて、時には臨機応変に対応するべき事の二つ目だ。

 



■ フロントフォークとフロントホイールの装着 ■ 


 

追記 : いよいよフロントフォークを装着する段だが、ステムブラケットのフォークが貫通する部分のフォークとの接触面のメンテナンスも加える。

ブラケットのフォークと接触(接合)する金属表面が若干サビていたため、ペーパーを使って表面を研磨して、最後に薄くグリスを塗布する。 金属と金属が接して接合する箇所は、どんな場合にもその接合面が荒れていてはいけないし、金属の表面はどんな箇所であっても表面にオイル(グリス)成分が塗布されているのが基本だからだ。

また、アンダーブラケットのフォーク固定用のボルトは、一旦取り外してネジ部の汚れを取って清掃した後で、ボルトの座面も含めて薄くグリスを塗布する。 というのは、このボルトのコンディションや締め付けトルクは、オートバイのハンドリングを大きく左右させてしまうからだ。ハンドリングを最も左右するボルトだからこそ、そのコンディションは一番大切にすべきだ。

・・( それにしても、ホンダ車は このボルトの材質がさほど良くない。アンダーブラケットもそうだが、定期的にメンテナンスを繰り返す場合には、2年に一度は交換した方が良い結果を生む)

さて、ようやくフロントフォークの取り付け作業に入る。
特に難しい点は無いが、トップブラケットからフォークトップの突出し量はノギスを使って正確に左右を合わせる。 フォークの取り付けボルトの締め付けは仮締めで留めたままにして、フロントホイールの装着へと移る。 もちろん、フロントホイールのベアリングとオイルシール(ダストシール)の状態の確認は不可欠だし、最低限のグリスの交換は必須作業だ。

今回の車両のベアリングは、片側(左側)は引っ掛かりは無いものの軽すぎる。ベアリングはある一定の荷重を想定して組んであり、新品時には決して軽くは回らない。軽く回るという事はクリアランス(隙間・ガタ)が発生している事であり要交換一歩手間の状態。 もう一方(右側)は明らかに少しの引っ掛かりがあって要交換。 オーナーには、必要となる部品を伝えて、次の機会に交換作業を行なう事を約束する。

また、ホイールの“グリス交換作業”ほど軽視されている重要作業を他に知らない。 タイヤ交換時など、オイルシール内部のグリスの拭き取りと充填作業を行なうのは当たり前の作業であり、その作業によって オイル成分が必要なゴム部品(オイルシール/ダストシール)のコンディションを整えて弾力を保ち、内部への異物の流入を防ぎ、ベアリングの摩耗を防ぐのに欠かせない作業だ。

しかし、この車両の場合も、それらの作業をしっかりと行なわれた痕跡は少なく、前回のタイヤ交換から走行距離もさほど伸びていないのに、オイルシールのリップ部は損耗し、それと接触する金属部分(カラー)も筋状に損耗しているため、両方の部品は要交換だ。

フロントホイールの装着作業へと戻る。
フロントホイール装着の前に、ディスクローター(板)の固定ボルトを一旦取り外して、清掃した後に軽くグリスを塗布して、対角線上に順番に少しずつ締めつけて、最後に規定トルクで締めつけて完成。 というのは、ディスクローターとホイールの間には“ ストレス ”や “ 歪(ひずみ) ”が発生しているので、機会があれば取り去っておくに越した事がないからだ。

・・( 緩み止め剤は、定期整備を行なう観点では無用だと考えているので、オーナーの了解を得て省略 )

ホイールをフロントフォークへと装着して、全てのボルトは仮締めとする。
次に 前側車体を降ろして、地面と直立状態(通常の走行状態と同じ)にしてから、フロントフォークの整列作業へと移る。
フロントフォークの整列作業は 二つの段階に分かれる。 一つは、前後方向(回転方向)の整列作業で、もう一つは 左右方向の整列作業が。 特に、前後方向の整列はハンドリングに重要で、これが少しでも狂っていると左右でハンドリングが変わってしまうのだ。

しかし、この作業を厳密に行なっている整備屋は殆ど無く、その上、新車の時からずれた状態で販売されているから始末が悪い。 よく、「左コーナーは得意だけど 右コーナーは怖い」というような言葉を聞くけど、決して 左側通行だけが原因でも、左側に心臓があるのが原因でもない。 左右のハンドリングが異なる一番大きな原因は フロントフォークの整列が取れていない事だし、この整列は ホンの少しの事でずれてしまうから、定期的に調整が必要になる。 オートバイを搬送する際に固定する時にも、長期間サイドスタンドで駐車しておくだけでも影響を受ける。

このフロントフォークの整列作業を行なった後、アンダーブラケット側の固定ボルト、アッパーブラケット側の固定ボルトを適正(指定)トルクで締め付け、その後で フロントアクスルの締め付けボルトを適正トルクで固定する。

次に、フロントフォークの左右の整列作業だ。
フロントタイヤに正対してしゃがみ、両手でアンダーブラケットを掴み、フロントタイヤが動かないようにしたままフロントフォークを何度かストロークさせます。 これによって、アウターチューブが最もストレスを受けない場所に移動するので、その後で アンダーブラケット下部にある固定ボルトを規定トルクで締め付けます。

・・( このストローク作業を 立った状態でハンドルを握って行なう方法もあるが、ハンドルを使うと左右方向への無駄な荷重を与えやすく、整列作業には不向きだと考える )

 



■ ブレーキキャリパー の整備 ■ 


 

今回は、キャリパーの状態も良くなかったので、ブレーキパッドの整備も行なう事にした。
と云っても、パッドの摩擦材の面取り作業や プレート裏面へのグリス塗布など、よく雑誌に書かれているような事は“鳴き防止”の作業には興味は無かった。 それらの作業以上に、“当たり前”の作業だ。

今回は二つの作業を行なった。
一つは、パッドのバックプレート(摩擦材が固定されている金属の板)の裏面の平面出し作業だ。 このバックプレート(金属板)は、本来はピストンに合わせて平面になっている必要がある。しかし、大量生産・生産コスト低減のために、プレートの平面度はあまり重要視されず、社外部品だけでなく純正部品の場合でも平面にはなっていない。 そのままでは、ピストンが作動(ストローク)した場合に、パッドと片当たりしてしまい、余分な作動フリクション(摩擦)が発生して正確な作動へと繋がらないのだ。

可能な限り、平滑な面を備える台や工具を利用して、磨き好きなオーナーに磨いてもらう事に。 最初は一部しか平滑な面に接触していなかったものが、作業 10分間ほどで我慢(?)できるまでになった所で終了とする。

もう一つの修正作業は、意外と無視されている、パッドがキャリパー側に強く当たる面の修正だ。 ブレーキを掛けて、パッドがディスクローターに当たり、引きずられそうになるパッドを支えている所は、パッドを装着するピンではなく、回転方向前方のキャリパーとパッドの接触面だ。
残念な事に、その接触面は元々小さいのに、前記の通り大量生産のために正確に面が出ていないし、無視されている。 バックプレートと直角を成すその面を、実際にしっかりと観察すると理解できると思うが、面と云えるような加工になっていないのだ。 そのままでは、本来接触すべき面積を100とすれば、10を下回る面(点?)で接触するブレーキパッドが普通に販売されている。 それをそのまま使うのは、機械的に見ても物理的に見ても変だしモッタイナイのだ。

これも、正確に直角の面出しが出来るような機材を整え、磨き好きのオーナーに任せる事にして約 5分間ほど。 その間に、キャリパー側の パッドとの接触面のクリーニング作業にいそしむ事に。

 



■ フロント ブレーキマスターシリンダー の整備 ■ 


 

良く出来た社外品のブレーキマスターシリンダーセットのブレーキタッチには感心させられるものもある。 では、ノーマルのマスターシリンダーはダメなのだろうか? その性能をフルに引き出していると言えるのだろうか?

確かに、社外品とは部品の材質や加工技術などに差があるのだろうが、それ以上に ブランド名とそれを必要上に賛美するマスコミの責任も多分にあるし、ライダーの無知も利用された神話の部分もある。 定期整備だけでなく、転倒などの事故からの修復を考えれば、純正品に勝るコストパフォーマンスを持った部品は無い。 後は、如何にして本来備えている能力を引き出すか、オーナーや整備屋側の考え方次第だ。

フロントブレーキマスターシリンダーでの修正作業は簡単だ。
あらゆる接触面を平滑(可能であれば鏡面加工)にして、潤滑を適切に行なうだけで、軽い力(操作)でリニアにブレーキ作動が得られるようになる。 ここで、磨き好きのオーナー(電動リューター持参♪)に外したブレーキレバーを渡して、接触面の磨き作業を依頼する。 接触面は、固定ボルト(ヒンジ)が通る 穴部の内面、その穴部の周囲でマスターシリンダーと接触する部分(裏と表)、そしてマスターシリンダー内部のピストンロッドを直接押し込む半円形の箇所だ。

特に、半円形の箇所は、新車の時からさほど平滑面は出ておらず、使い込んだ車両になると編摩耗して本来の形になっていない場合が殆どだ。 リューターで、磨き粉の番数を代えながら、熱心に磨きあげるオーナーを横目にリア周りの作業を進める。 やがて、磨きが終わったのを見て、マスターシリンダー側でレバーと接触する面を全て平滑に磨きあげるように指示をする。 特にキモになる作業は、マスターシリンダー内部のピストンロッドがブレーキレバーと当たる面の磨き作業だ。 ここは、新車の時から平滑度は出ていないので、平滑に磨けば磨くほどに、ブレーキの作動フリクション(摩擦)が減って、より正しい方向に力が伝わりやすく、ブレーキレバー側の半円部の編摩耗も防げるのだ。

その磨き作業を任せている最中、「アッ!」と声が響いた。
聞けば、ピストンロッドの周囲にあるゴム製のブーツカバーをリューターで破損させてしまったという。

仕方ない。 ストック部品の中から ブレーキマスターシリンダーの内部パーツセットを探し出し、交換作業へと移る事に。 マスターシリンダーを外し、清潔な作業台の上で、清潔に洗った手で作業を進める。 交換前の内部パーツ・特にシリンダーに装着された 二つのオイルシールのリップと、新品部品で組み上げたそれとを触って比較体験してもらう。 いくらブレーキフリュードの中にあったとしても、ゴム製品はこすれて摩耗してしまい、効果が減少する事を指先の感触だけで理解できるのだ。

まあ、これで ブレーキフリュードも全交換だから良しとしよう。
でも、ブレーキキャリパーのシール交換でも全交換だろう ・ ・ な ♪

 



■ リア周りの分解整備 と 前後タイヤの整列 ■ 


 

機械というものは、幾つかの金属やゴムなどの部品が組み合わさって機能するようになっている。 それは、ちょうど人間世界にとって、社会や会社が機能しているのと似ている。
個々の部品(人間)が、本来の能力をしっかりと発揮する様に組み合わさっている場合には、想定された能力を発揮するものだ。 しかし、適切な位置に置かれなかったり、適切なケアが無かったり、大きなストレスが掛かったまま放置されたすると、機械部品も人間も同じく、様々な不具合やトラブル、性能低下を起こすものだ。

だから、オートバイも定期的に主要な部品は分解してやって、状態の確認をしてやり、潤滑のケアを怠らず、より正しく適切な場所に、適切な順番で、適切な固定をするだけで、本来の能力を発揮するし長生きするものだ。

今回は、フロント周りに時間を喰ったので、リア周りは分解&確認&潤滑&組立の作業に留めた。 リアホイールを外し、サスペンションユニット下部の固定ボルトを外して、リアブレーキの状態の確認とスイングアームの作動確認(フリクションとガタの有無)、リアホイールベアリングの状態確認とオイルシールの確認、それからベアリング周りのグリス交換、サスペンションユニット下部のベアリング用グリスの交換、ブレーキキャリパーのスライドピン周りの破損したダストシール(ストック有り)交換とグリスアップ等。

その後で、フロントとリアタイヤに専用の測定用治具を固定して、前後のタイヤの整列出しを行なう。 どんな車両も、例え新車であっても、前後のタイヤは整列していないと断言できる。(そういう整備作業を行なっていないため) 前後のタイヤが整列していないと、酷い場合には左右のハンドリングが異なるだけでなくタイヤの編摩耗が発生するなど、車両の能力を大きく損なう原因となる。

整列させる作業は、リアホイールの位置調整で行なうのが一般的だが、スイングアームに刻まれた調整用の目盛りは目安(めやす)に過ぎない。 正しく整列しているかどうかは、実際にチェックする以外に方法は無いのだ。 前と後ろからタイヤをチェックして合わせる方法もかなり正確に出来るが、測定用の治具を使った方がより正確で簡単に合わせられるのだ。

作業を始めてから既に 12時間と 30分以上経過。 時刻は 深夜 0時を過ぎている。
今日はここまで。 後は、一番大切な作業に移ってもらう事にする。 それは、実際に走行して、変な所が無いか? どんな変化が起きたか? オーナー自身に体験してもらうしかない。

実際に、車両をガレージの外に出して乗り込む時に変化があった。
いつもの調子でまたがろうとしたオーナー、フロント周りのフリクション(摩擦)が減っていたために、思わず右側に倒れそうになったのだ!

後は、オーナー独自の調子の感想文が届いているので、長文だが、興味のある人は読んで欲しい。


 
解説記事と画像 :小林 裕之
  
Texts and images : Hiroyuki Kobayashi




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           Yokai Garage Maintenance Event Report
     「バイクは新車がベストな状態ですか?」という質問で始まったこの企画、
     終わってみれば、車体の軽さだけでなく、燃費向上まで実現しました !


 ● 妖怪ガレージ 持ち込み企画  「ZX-6RR 分解整備編(1) 

     1台のオートバイに、正しい整備とセッティングを行なった記録です
     今回はZX-6RR, 主にフロント周りの整備、オーナー感想文から始まります








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