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  友人のVTR、妖怪ガレージ・整備記録(3)
   "Yokai" Garage, Honda VTR
  complete maintenance record
 "part 3"


6月15日、以前から 整備をしている友人のVTR
今日は キャブレターのオーバーホールだ。

前回、少しだけ試乗させてもらった時に、エンジンの不機嫌さが気になっていたのでキャブレターのオーバーホールを提案したのだが、そのメニューが採用されたのだ。

 作 業 日   : 2014年 6月 15日
 作業内容  : キャブレターの分解整備と同期調整


ホンダVTR 分解整備 キャブレター編_3
 

■ キャブレターの分解整備 ■ 


 

前後ホイールのベアリンク、オイルシール(ダストシールキャブレターのオーバーホールは定番メニューの一つだから、余裕一杯で自信はある。
まして、同じVTRを持っているのだ。

しかし、燃料タンクを外してエアクリナーボックスを外してから気付いた事がある。
 「 僕は、VTRのキャブレターをオーバーホールした経験は無い! 」
少しだけ動揺したが、友人の前では隠しておいた。

 「 V型エンジンのキャブレターは少し面倒だったなぁ〜」
 「 でも、VFR750 のキャブレターのオーバーホールの時よりは楽だろう 」
 「 CBX1000 の時の様に、エンジンを移動させる必要も無いだろうし ・ ・ ・ 」

エアクリーナーボックスを外した後は、見た事の無い光景での作業が続く。
でも、思った通りそれ程の難易度ではない様子に安心しつつ、サービスマニュアルも確認すると ・ ・ ・

 「 無い! 4つある筈の部品(ノックピン)が 2個しか無い 」

 



■ ノックピンの作製 ■ 


 

ノックピンとは二つの部品をお互いに合せて固定する場合、その位置関係がずれないようにする為に部品間に差し込む“位置決めピン”だ。 そして今回、無い事に気付いたのはキャブレター本体とクリーナーケース底部の金属ベースとの固定部にあるノックピンだった。
 
外したキャブレターとエンジン本体(シリンダーヘッド)外したキャブレター関連の部品や床を確認するが、落下している様子もない。 聞くと、過去に 2度ほど キャブレターの整備に出した事があるとの事。

 「 もしかすると、その時に脱落させたまま組み立てているのかも知れない 」

この部品は無くても組立ては出来る。
でも、この部品は他の大切な部品同士を、正確な位置関係で組み立てるために必要な部品だ。 オーバーホール(完全整備)と云うからには、部品を欠落させたままでは組立てられない。

ストックしているホンダ車用の部品庫の中から、使えそうな部品を探すと、エンジン用のノックピンを探し出した。 でも、長さが長過ぎる。 迷わず、旋盤を使って長さ合わせて切断とテーパー加工をする。 決して純正部品の様な仕上がりではないが、十分に位置決めには使えるレベルだ。

 「 良かった一安心だ 」

ホンダVTR 分解整備 キャブレター編_4

 



■ いよいよ分解整備 ■ 


 

キャブレターは色々な部品が組み合わさっているが、それぞれの部品が正しく機能するからエンジンも機能する。 中には細かな通路が開いた部品もあるし、キャブレター本体の内部にも細い通路がたくさんある。
外せる部品を全て外してからキャブレター専用のクリーナー漬けにする。

すると ・ ・ ・ 普通ではありえない色の液体が本体から流れ出てきた。

思った通り、内部の通路(回路)に汚れが溜まっていたようだ。 という事は、細かな通路が開いた部品の多くに汚れによる詰まりがある筈だ。

ホンダVTR 分解整備 キャブレター編_5

ここは、何でも経験したい友人に、細かい部品の更に小さな通路の掃除を任せよう。
(老眼には、苦手な作業の一つだから ・ ・ ・ )
専用のツールとクリーナーを使って、部品一つひとつ、通路の一つずつクリーニングだ。

その作業を任せている間、キャブレター本体の通路のクリーニングをして、最後はエア(コンプレッサー)を使って入念に汚れを吹き飛ばす。 それから、クリーニングを終えた部品を一つひとつ丁寧に組み上げていく。 ゴム製のダイヤフラムには、薄くグリスを塗布して表面保護と柔軟性を確保させ、ゴム部品のついたチェックバルブもきれいにしよう。

キャブレターの組立てを終え、エンジンに装着して、ケーブル類を元通りに組立て、エアクリーナーボックス、燃料タンクも装着完了。 エンジンは、3度目のセルモーターであっけなく始動。 最初に時折出ていた咳もやがて止むと、明らかにエンジン音が変化している事に気付いた。

確認の為に試乗に出て行った友人も、今回は意外に早く帰ってきた。

 「 ??? どこか不調箇所があったのか 」

友人の感想を聞くと、そうでは無かった。
 
 「 全然! 違う 」
 「 走り始めた直後から、違いがはっきりと分かったよ! 」
 「 ハーレーみたいなエンジン音だったのに、ハーレーじゃあなくなったよ 」
 「 今まで、(妖怪ガレージで)やってもらった整備の時にはあんまり変化が分から
   なかった  けど、今回は違ったよ 」

最後の感想にはちょっとがっかりしたが、それだけ今回の作業の成果が大きいという事だろう。 僕も満足だ。 何故なら、これで僕の VTRのキャブレターを整備する時に備えた練習ができたからだ。(♪)

その変化については、次ページに掲載のオーナーの感想文から読み取って欲しい。


 
解説記事と画像 :小林 裕之
  
Texts and images : Hiroyuki Kobayashi



ホンダVTR 分解整備 キャブレター編_6



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 ● 妖怪ガレージ 持ち込み企画 「Vストローム250 整体編
           Yokai Garage Maintenance Event Report
     「バイクは新車がベストな状態ですか?」という質問で始まったこの企画、
     終わってみれば、車体の軽さだけでなく、燃費向上まで実現しました !


 ● 妖怪ガレージ 持ち込み企画  「ZX-6RR 分解整備編(1) 

     1台のオートバイに、正しい整備とセッティングを行なった記録です
     今回はZX-6RR, 主にフロント周りの整備、オーナー感想文から始まります








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