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Common sense and insane

オートバイが備えている能力を正しく安全に発揮させるには、正しい知識と適切な整備と調整・セッティングが必要です。しかし、二輪業界全体の商業主義に影響されて、より適切な知識や整備を求めるライダーにとっては、充分に発揮できる環境とは言えません。

Proper knowledge and proper maintenance and adjustment/setting are necessary for a motorcycle to properly and safely demonstrate its capabilities. However, for riders seeking more appropriate knowledge and maintenance, the environment does not provide enough of them.


  ステムベアリングの調整について、(1)

  About Stem Bearing Adjuatment part 1



  ステムベアリングの調整をして“ガタ”を取る方法についての質問がありました
  ご自身の手で解決する事も考えていらっしゃる様子なので、簡潔な回答と基本的な調整
  そして、詳細な基礎編などに分けて解説を進めています



【 質 問 】 Question


こんにちは 小林様
とっても ご無沙汰しております。お元気でいらっしゃいますか? VTR250 の M です。

いきなりですが お尋ねしたいことがあります。
2014年11月のイベントに参加させて戴いた時には 大変 お世話になりました。
その時 色々 バイクを見てくださった件で お伺いします。
ステムのネジを緩めて・・締めた時って ただ それだけでしたでしょうか?
相変わらず ステム周りは わかりません^^; と言うのも その2年後くらいに 
ステムが動くと言われましたが わたし本人は わからなかったので そのまま・・
そして 先日 ブレーキOHをバイク屋にお願いし その時に やはりステムが動くと言われ
確かにその動きを確認しました。
ほんの少し1〜2mmほどです

これは 自分でも出来る(例えば締め直すとか)事なのか 
もう ベアリング交換まで 必要なのか・・
どのような作業をしてくださったのか 宜しかったら 教えて戴けませんか? 
暑くて ぜーんぜん乗れませんので お時間のある時で・・すみません。

  < 中略 >

お手数おかけしますが よろしくお願いいたします。
 
    


ステムベアリングの調整について GRA













【 回 答 】・ 簡潔編 Answer Concise edition


こんにちは M さん
お久し振り!! です。 その後も、お変わりなく 元気にお過ごしでしょうか。

さて、お問い合わせの件・『 ステム調整 』については、喜んで私が知っている事 や 体験してきた事を交えて、分かりやすく、簡単に M さんに伝えたいと思います。
なお、ステムベアリングは オートバイにあるベアリングの中で 一番ライダーの近く にあるので、比較的 その変化や調整の違いが分かりやすく、気になると思いますが、 ホイールベアリングやブレーキ関係の部品とは違って、安全性を直ぐに損なう部品 ではありませんので、気長に、じっくりと対処される事をお勧めします。
 
 
ステムベアリングの調整について GRA



【 簡潔回答 】 ・・ 簡易対処方法を紹介します。が、あまりお勧めではありません
 
ご自身の手で、手を掛けずに簡単に“ガタ”や“音”が出ない様に対処したいという事であれば、さほど大がかりな工具やスペースも必要ない、簡易的な方法があります。
それは、ステムベアリングへの初期荷重を調整する「アジャスティングナット」を、マイナスドライバーなどの工具を利用して力を加えて回して調整する方法です。
  
  
ステムベアリングの調整について GRA    
   
“ガタ”を無くしたいという事であれば、初期荷重を高める方向、つまりアジャスティングナットを締める方向(時計の回転方向)へ少しずつ(5度から10度ずつ / 時計の針で 1〜2分)回して、再度“ガタ”を確認していく方法です。 恐らく、イベントの際に行なった作業でも同様な簡易的な対処だったと思います。

アジャスティングナットは、アッパーヨーク(別称:トップブリッジ)の下にあり、ステムナットを緩めて、フロントフォークをアッパーヨークに固定しているボルトを緩めれた後、アッパーヨークを 1p ほどだけ手前(上方)に引き上げれば、アジャスティングの側面が簡単に確認できる様になります。その状態で、前記の調整を行なうのが簡易対処方法です。

この対処方法は、一般的によく行なわれている方法ですが、積極的にはお勧めしません。
その理由は、ベアリングの状態は確認できないので、“ガタ”が増えた原因を解明する事ができませんし、その上、ベアリングに適正な初期荷重(組み込み時に与える荷重/ 与圧と言います)の調整も出来ないからです。

したがって、オートバイの状態を最適に保つ事を願うなら、次の項【 回答・基本編 】を参考にして分解整備をされる事をおす済まします。また、ベアリングの状態を確認しないで、ベアリング交換をする事は最適な修理方法ではない事をお伝えします。
  
  
     * * * * * *
  

【 補足説明】

  ベアリングの“ガタ”と聞くと、“ガタ”(すきま)はあってはいけないもの、すぐに
   取り去らないと危険だと誤解され易いのですが、ベアリングは一定の“すきま”が必要
   な部品です。“すきま”を小さくし過ぎる整備をすると、ベアリングの早期摩耗や破損
   を招きます。ただ、残念ながら、それを無視した整備例は数多くあります。

  ベアリング交換は、大きな手術と一緒です。 多くのショップでも ベアリング交換を行
   なう機会は少なく、正しく交換できないと 症状が続く場合もあります。充分な検査も
   せずに「直ぐに手術が必要だ」と言う医者には気をつけてください。

  次項の【回答】・基本編で、ご自分や友人の方と一緒に整備・確認をされる場合に合わ
   せて、基本的な整備例を紹介します。 また、必要になる工具は、一般的なハンドツール
   以外に、以下の工具が必要です。
   ・・ フロントスタンド、 リアスタンド、フックレンチ(アジャスティングナット用)
      ステアリングステム ナット用の ソケット &レンチ









【 回 答 】・ 基本編(分解整備) Answer Basics


では、ステムベアリングの確認と調整で大切な事を、項目ごとに、順番に解説をします。
項目ごとの詳しい作業の様子については、ページ下段で紹介している『ステムベアリング整備』や ページ3で紹介する 解説動画・『ステムベアリングの調整について』を参考にしてください。
なお、フロントホイールの取外しや、フロントフォークの取外し作業の説明は割愛します。


1. べアリングのボールとレースの傷を確認します
 
 フロントホイールとフェンダー、フロントフォークなどを取り外して、ステム中央部にある
 ステムナットを緩めて取り外して、アッパーヨーク(トップブリッジ)とアンダーヨーク
 (ボトムブラケット / 三つ又)を取り外します。

ステムベアリングの調整について GRA

 続いて、ベアリングの中のボールと、ボールと接する円環状の部品・レースに残る古いグリ
 ースを拭き取ってから、ボールとレース表面の状態を確認します。小さな傷や窪み(打痕)
 は。爪先で表面をなぞるように触ると、確実に確認ができます。
 ボールとレースの双方に問題が無ければ交換の必要性は低く、明らかに傷がある場合には交換
 がお勧めです。

ステムベアリングの調整について GRA

ステムベアリングの調整について GRA
    
  

2. グリースを新品に交換・給脂します

 ベアリングには、ボールとレースの間に僅かな“すきま”があり、その“すきま”には新しい
 グリースが満ちている事が正常な動作の絶対条件です。必ず、古いグリースを拭き取り、その
 粘度やザラつきを指で確認した後、ベアリングの全ての“すきま”を新しいグリースで充填
 します。

【 補足説明】

  オートバイで数多く使用されているベアリングの中で、ステムベアリングが最も特殊な
   用途と環境で使用され、その為にオートバイ特有の問題を起こしている事を次のページ
   で解説していますので、ご覧下さい。




3. アジャスティングナットは軽く締め、全体を組立てます

 いよいよ、組立てに入りますが、この時、最も気をつけたい事はアジャスティングナットを
 締め付け過ぎない事です。車両メーカーが指定の締付けトルク値よりもずっと軽い力で締め
 付ける事をお勧めします。(理由は、次ページ で解説していますので、ぜひ、ご覧ください)
  
  
ステムベアリングの調整について GRA


以上、簡単ですが、ステムベアリング整備について解説をしました。
また、別コラムで『 ステムベアリング整備 』を掲載していますので、参考にしてください。

ここまでの解説で、もし、ご不明な点や確認が必要な事がありましたら、ぜひ、お問い合わせください。 また、次のページでは、「オートバイに使われているベアリング」や「ステムベアリングの特徴」などを詳しく解説していますので、興味のある方は、一読をお勧めします。










解説記事と画像 :小林 裕之
  
Texts and images : Hiroyuki Kobayashi



* *  次ページで、『 ベアリングの種類と整備上の注意点 』を掲載しています * *
The next page is the answer to the detailed situation

『コラム一覧』ページへ移動します
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わからない用語は、ページ下段の【用語の解説辞典】で確認できます
「質問」を送信される方には説明を返信しますので、利用してください



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