ステムブラケットに再度フロントフォークを挿入する際にも スムーズに入らない。
きっと、ブラケット部に歪があるだろう。
交換こそが最善だがそれは無理なので、ブラケット内部をペー パーで軽くサンディングし、組立による車体へのストレスの 蓄積を防ぐ。
続いて、脱着していたフロントホイールに移る。
ここで大切なダストシールのコンディションを、オーナーにも触診を依頼して、ダストシールで一番大切なリップ部に張りと柔軟性が無くなっている事を確認してもうらう。
次に、カラーを仮組みしてもホールドできない程のシールのリップ部が摩耗している事も確認した。本来なら即交換モノのコンディションだが、無い袖は振れない。内部に残っている古いグリスをクズが出にくいティッシュ(キムワイプ)で取り除き清掃をして、新しいグリスをリップ部だけでなく内部に腹五分程溜めこませ、ダストシールとベアリングの長生きを期待する。
≪ 先にも書いたが、オートバイ販売店やタイヤ販売店がグリス交換の常識を持っていれば、世の中のオートバイ達は好調を持続し、重要な部品の損耗を抑えられ、誰にとっても大きな喜びになるだろう ≫
アクスルシャフトを装着後、アッパーブラケットのフォーク固定ボルトを仮締めして、フロントジャッキを降ろしてフロントホイールに荷重を掛けた後、“妖怪棒”を使ってフォークの整列を取る。
調整の後はボトムブラケットのフォーク固定ボルトを指定トルク・20 Nmで固定。次にフロントタイヤを接地固定したままフォークをストロークさせ、フォークの左右間の平行を出し、その後でアクスルシャフト固定ボルトを指定トルク・20 Nm で固定。最後にアッパーブラケットのフォーク固定ボルトも指定トルク・20 Nmで固定。より大きな力が加わる大切なボルトから順に締め付けるのは、エンジンマウントボルトなどフレーム関係でも共通の原則だ。
全ての作業を完了して、リア(レーシング)スタンドも外してサイドスタンドで立てる。
いつも感じる事だが、当たり前の整備を順序正しく適切に行なうとオートバイは軽くなる。今回も、サイドスタンド状態からオートバイを立てただけで別の車の様だ!
オーナーも立てる動作だけで軽くなった事を体感し、押し歩きすると更に実感した様だ。
殆どのオートバイはストレスが蓄積して“コリ”が溜まった状態だから、今回の作業の様にフロント周りだけでも、正しい整備で車体からストレスを取り除くだけで確実に軽くなる。リア周りも整備すれば更に軽くなる。そして、フレーム全体をやればもっと軽くなるのだ。 |