VTR250 でのボルト交換のリポートでも書いたけど、ボルトは大切な“機能部品”だ。 今までも、ネジ山のクリーニングや座面の確認、締め付けトルクの管理や変更を行なってきた。 特に 操縦性に大きな影響与え、整備頻度が高く、純正ボルトでは消耗が激しいと経験している フロントフォーク固定用のボルトは、定期交換や材質変更も行ない、それなりに成果も挙げてきたと思っていた。
けれども、もっと奥が深かったようだ。
ボルトの材質や品質、強度によって、随分と大きな影響・効果が出ている事を実感した。
VTRの場合には、下ヨークの固定用ボルト(M10)のメーカー指定締め付けトルクは 39Nm (4.0 Kgf・m)はボルトへの負担が大きく、定期的な交換を行なった後に ステンレス製へと交換して数年を過ごし、そのぎこちない操縦性に変わっていくのに嫌気が差し、鉄製(SCM435 / 強度区分 10 . 9 / クロメート処理 )へと交換して納得していた。
ただ、トラ君の場合、前後サスペンションの設計自体に問題あり。 まるで、「どろろ」の様に、苦心して対処しても、次から次へと課題を与え続けてくれている難題ばかり。
リア サスペンションは一定の収まりを見せ、フロントも上下ヨーク交換を含む大幅な改修も施して、「 まあ、こんなもんでしょう 」と 納得させようとしていた頃だった。
それが、ボルトの講習で勉強をして、自宅に戻ってから少し学習を重ね、その知識で新しくボルトを購入して、試しに交換しただけで、こんなにも大きな効果が出るとは想像すらしていなかった。 ( ありがとうございました! 池田金属工業 さん )
特に、VTRでの交換で得た効果程度だろうと思っていた トラ君の場合、もっと大きな効果が出せた。 その原因・理由を考えてみた。
一つは、整備頻度や乗車頻度が トラ君の方が高く、その分だけシビアに効果が表れやすい。 二つ目は、設計上、トラ君の操縦性のキャパが小さく、その分だけシビアに表れた。
どちらの原因もあるだろが、下ヨークのフロントフォーク固定用ボルトの変更が大きかったと思う。
VTRで確認できた 上ヨークのボルトをステンレス製から SCM435・鉄製への交換による効果とは別に、トラ君の 下ヨークのボルトを SCM435・鉄製に変更した効果が大きかったのだろう。
交換前までは、メーカー純正のボルトだけど、材質や強度区分が分からないボルトだったのだ。 目視する限りは目立った破損は無く、締め付けの際の感触にも違和感を感じず、疑った事も無かったけど、この機会に合わせて交換した結果、大きな効果に繋がった可能性は否定できない。
まあ、そのボルトの件以外、上ヨーク用ボルトのサイズ変更、アクスルシャフト固定用ボルトで使用していたワッシャー(座金)の廃止など、小さな変更は多くある。
今回の変更による一番大きな経験は、【 ボルトの締め付けトルクの管理よりも、軸力の管理が大切 】 という事だ。 ボルトの一番の働きは“軸力”を発生して他部品を固定する事だから、その“軸力”が適切な大きさで与えられ続けられる事を考えて、清掃・整備や交換作業を行なう必要があるという事だ。
今回のボルト交換では、材質変更による“軸力”の特性変更が生まれて操縦性に影響を与え、クロームメッキ処理により安定した“軸力”管理が容易になったのだろう。 残すは「強度区分」による操縦性への影響度合いの確認が必要だろう。 交換前のステンレス製ボルトの「強度区分」は 「A2-70」、引張強さ = 700 N/mu で、交換した 鉄製(SCM435)ボルトの「強度区分」は「12 . 9」、引張強さ = 1200 N/mu だった。
今後は強度区分を下げて、「10 . 9」をクロームメッキ処理ボルトで試す必要もありそうだ。
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