タイヤが生む旋回モーメントは、必ず多くのライダーが体験済み |
Many riders have probably experienced the turning moment generated by tires. |
「旋回モーメント」とは、タイヤがバンクして(傾いて)路面と接地している時、タイヤの接地面の中心がタイヤの中心線と路面との交点(伸ばした中心線が路面と交わる点)と離れてしまうので、その離れた距離の大きさに応じて発生する、タイヤを上方から見て接地した側へと回転させようとする力の事です。
オートバイの場合、前後のタイヤの両方で旋回モーメントは発生して、その前後タイヤの旋回モーメントのバランスによって旋回のバランスや効率が変化します。
先ずは、旋回モーメントの発生が一番感じやすい前輪タイヤの場合を考えてみましょう。
前輪タイヤ(フロントタイヤ)の場合、タイヤが傾いて接地面中心がタイヤ中心線から離れるほどに大きな旋回モーメントが発生する原理に変わりはありません。ただ、前輪はハンドル回転軸に沿って回転する(切れる)仕組みになっているので、きっと、殆どのライダーは旋回モーメントの存在を強く感じた経験はある筈です。それは、低速で少しだけバンクさせてのターン中に、フロントブレーキを強めにかけ過ぎた時、前輪が急に切れ込んで驚いた経験はある筈で、その前輪を旋回している方向へと向きを変えた力が旋回モーメントです。
強めのブレーキで旋回モーメントが感じられる理由は、強めのブレーキによってタイヤと路面との間に働く力(摩擦力)が強くなり、それによって旋回モーメントがより大きくなったからです。ただ、フロントブレーキを全くかけていなくても旋回モーメントは発生しているのですが、それを強く感じる事が出来ない理由は、フロント タイヤ には「トレール量」という安定要素が(フロントサスペンションの設計で)必ず設定されている為で、そのトレール量による安定成分(タイヤが向いている方向へと進ませ様とする方向安定性)と旋回モーメントが釣り合ってバランスしているから、普段のコーナリング(旋回)では感じ難いのです。
フロントタイヤの幅が狭い理由も、旋回モーメントで説明できる |
Questions about front tire size can also be explained by the turning moment |
ここ 35年の間に オートバイ用のタイヤの進化と変化は激しく、主流はバイアスタイヤから
ラジアルタイヤへと移り、タイヤサイズ(横幅)も一気に拡大して、特にリアタイヤの幅は倍近くに広がりましたが、フロントタイヤの幅は、20年以上、120サイズが上限の主流になっていますが、これも旋回モーメントが強く働き過ぎるのを嫌った結果とも言えます。
また、旋回性の向上を狙って、フロントタイヤの小径化が進んだ時期もあり、一時は 16インチを採用する車両も数多く存在していました。しかし、現在のロード専用車両の多くは 17インチに留まっているのも、小径化によって減る方向安定性(タイヤが向いている方向へ進もうとする力)が小さくなり過ぎて、フロントタイヤの安定性を保つバランスが保ち難かったので、17インチサイズがバランスを取る最善のサイズとして見なされているのも理由の一つでしょう。現在は主流となっているフロントサスペンション形式・テレスコピック形式を採用する限り、フロントタイヤのトレッド幅と径には大きな変化は起きないでしょう。
(※ 旋回モーメントに関する詳細な解説は、改めて別記事で解説の予定です)
This turning moment is one of the most important features of motorcycle tires, and this feature prevents the front tire from being wide enough and weakens the turning force of the vehicle when the rear brake is used.
タイヤの旋回モーメントとコーナリングの関係は、次ページで・ |
See the next page for the relationship between tire turning moment and cornering |
前輪の旋回モーメントの話 はここまでにして、次ページで、前後タイヤに発生する旋回
モーメントとコーナリングの関係から、リアブレーキの使い方一つで効率の悪いコーナリング(旋回)になる理由を、分かりやすい図を使って一緒に考えましょう。
次のページでは、オートバイの旋回と駕籠(かご)の旋回を較べて解説します。きっと、オートバイをもっと理解できて上手になります。
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