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 Common sense and insane

オートバイの運転講習では、リアブレーキの多用を奨励している事が多く、実際に安全運転競技などでも過剰な程に多用している例が大半です。しかし、直線走行でも旋回走行でも、物理的に考えれば、リアブレーキを主体に使う事は非効率であり、決して安全な操作だとは言えません。

Many motorcyclists encourage the heavy use of rear brakes, and in fact, we can see many cases of unusual heavy use in safety driving competitions. However, from a physical standpoint, using the rear brake in both straight lines and turns is not only inefficient but also unsafe.



 旋回効率の高い コーナリングを!(2)

  Q&A Dosen't the Rear Brake Help Turn?
chap.5



【 解説 】旋回モーメントを利用した、最も効率の高い旋回は・・
 
     The most efficient cornering using the turning moment is ...

 四輪用語・「アンダーステア」と「オーバーステア」との比較
Cornering using mainly the front brake is safe with high turning efficiency


「アンダーステア」や 「オーバーステア」という用語は、ページ 2 で解説した様に、四輪車の自ら旋回する意志の無く主体性が無いタイヤを使って車体を旋回させる時、その操縦性のアンバランスを示す言葉ですから、オートバイの操縦性を表す用語として適していません。が、四輪車のバランスの悪い旋回性を補う為の特殊な車体機構から、オートバイにとって最も効率の良い旋回の解説をしましょう。

下図で、四輪車の旋回操縦性の課題を解決する為に、一時は多くの車両で採用された、四輪操舵システム(4WS)を紹介します。


上の左図は、低速走行時に旋回しやすく(曲がりやすく)する為に、ハンドルを操舵して前輪を旋回方向へ向けた時、同時に後輪を前輪とは逆方向へと操舵させる機構・システムを示しています。また、右図では、高速走行時にドライバーが意図した以上に旋回してしまうという、四輪車にとって最も危険な操縦性・オーバーステアを未然に防ぐ為に、後輪を前輪と同じ方向へと自動的に操舵させて、旋回効率を下げて旋回し難い特性を目的とした機構・システムです。

ページ4 の解説を読んだ人は気付いたでしょう。四輪操舵システム(4WS)がわざと旋回効率を落とした状態、上図の右側の図の状態こそ、オートバイで旋回を行なう際、リアブレーキに大きく頼った旋回効率の悪いコーナリングと同じだと言えます。


 


さあ、いよいよ、次の項で旋回効率の高いコーナリングについて説明しましょう。 それは、あなたが意識しているか意識していないかに関係無く、加速している時には必ず働いている作用ですから、ぜひ、安全なライディングの為にご覧ください。
  
 

 
 
 旋回モーメントを利用した、効率の高いコーナリングは ・・
The most efficient cornering using the turning moment is ...


さあ、ここから、効率の高いオートバイの旋回について考えてみましょう。
既に気付いた人も多いと思いますが、「世輪車の四輪操舵システム」の低速走行時モード、つまり、後輪を旋回方向とは逆の方向へと進ませると効率が高い旋回・コーナリングになります。

オートバイの場合、リアタイヤを逆方向へ操舵させる事は出来ませんが、実は、オートバイのタイヤにはそれと同じ作用する特性が初めから備わっています。そして、それも「旋回モーメント」なのです。その「旋回モーメント」の働きを下図で説明をしましょう。





走行中にバンクさせると、路面から受ける路面抵抗(摩擦)と「バンキングブレーキ」によって、タイヤを旋回方向へと向かわせる「旋回モーメント」が自然に生まれるのと同じ様に、タイヤをバンクさせたままで加速を積極的に行なう事で、リアタイヤを旋回方向とは逆の向きへと向かわせる「加速・旋回モーメント」が自然に生まれます。

この時、フロントタイヤの通常の旋回モーメントとリアタイヤの加速・旋回モーメントが一緒に働き、大変に旋回効率の高い旋回が可能になります。この状態は、四輪車の 四輪操舵機構の低速走行時と同じですし、駕籠(かご)で旋回を行なっている時にも自然に行なっている状態と同じです。


と、説明すると、決まって反対意見があります。

 「 そんな走り方、教習所でも講習会でも、注意される程に危険な走り方です! 」
 「 リアタイヤをスライドさせて走るなんて!できないし、やってはいけない事 」






 加速・旋回モーメントは、誰もが、いつも自然に利用している
Accelerated turning moment is a moment that everyone naturally uses all the time


私達・ライダーは 全員、ブレーキを使わないで走った事が無いのと同様に、加速・旋回モーメントを使わないで走った事がないライダーは一人もいないのです。オートバイを少しでもバンクさせた状態で加速している時には、必ずリアタイヤには「加速・旋回モーメント」は生まれて、私達はそれを利用して走っているのです。

フロントとリアのブレーキ操作を、ただ漫然としか使ってない人もいる他に、タイヤにかかる荷重やグリップ力を感じながら適切なブレーキ操作をしている人もいる様に、オートバイに備わっている「旋回モーメント」特性を理解して正しい操作を意識している人もいれば、初めから一切理解しようとしない人もいるだけで、「旋回モーメント」は常にタイヤと共にあるのです。

例えば直進走行時に、フロントブレーキの操作を適切に行なう事でフロントタイヤの接地面への荷重を充分に高めて、効率の良いブレーキング(制動)と安全が得られる事を実感しているライダーは多いと思います。それは旋回加速時でも同じで、アクセル操作を適切に行なう事でリアタイヤへの荷重を充分に高めると同時に、効率の良い旋回と安全を生む「加速・旋回モーメント」は実感できますし、車両特性を活かした効率の良い安全な運転の実感を目指すライダーなら必要な事です。

直立させたままでしか加速を楽しめないとすれば、その人はオートバイ・ライディングの1/10 しか楽しめていないと私は思います。オートバイ・ライディングの真の楽しさは、旋回時のフロントブレーキ操作とアクセル操作にあるのです。
  
  

  
  


 
 旋回モーメント走行は、最も自然な走行スタイル
Turning moment riding is the most natural riding style


もう一つ、 よくある誤解が「スライド走行」です。
 
私は、スライドとは一定以上のグリップを失った(失わせた)走行スタイルだと捉えています、例えば、四輪車がリアタイヤだけに急激なブレーキ操作や加速操作を加えて、リアタイヤのグリップを失わせたままコントロールするドリフト走行がそれに該当します。オートバイの場合では、オフロード走行時に四輪車のドリフト走行と同様な走り方をしたり、或いはエキストリーム走行でも同様なドリフト走行を見る事ができます。

しかし、旋回モーメント走行は、タイヤのグリップ力を最大限に高めて、高めたグリップ力を利用したグリップ走行です。なぜ、そんな事が言えるかと言えば、オートバイのタイヤの形状が「旋回モーメント」を生み出す為に作られているからで、それを利用した走り方こそ一番自然な走らせ方ですし、最も旋回効率が高くて安全な走行を可能にする走り方なのです。

別な見方をすれば、タイヤに適切な荷重を与えてグリップ力を高めて、旋回モーメントを利用する走り方が適切なライディングですから、一般的によく見かける乗り方で、コーナリング中に中途半端なアクセルとブレーキ操作を併用し続けて一定の速度で旋回を続けるライディングは、タイヤへの荷重を充分に高める事も出来ず、グリップ力を高めた安全な乗り方とは言えません。

( ※ タイヤへの荷重を高める走り方については、別途記事で解説の予定です ご期待を!)


When the vehicle is leaned, the turning moment is created by the frictional resistance the tires receive from the road surface and the "leaning brake." In the same way, when the vehicle is leaned and accelerated aggressively, the "acceleration turning moment" is created in the rear tires in the opposite direction to the turning moment, and this "acceleration turning moment" enables cornering with the highest turning efficiency.
 
The most important thing for a motorcycle is to keep enough load on the tires to increase their grip, and then to create a large enough turning moment to control the front-rear balance of the moment for efficient and safe cornering. And I think that these operations are the greatest pleasure of motorcycle riding.




 実際の走行風景や走行例を動画で解説は ・・ 次ページで
See the next page for a video showing an actual driving example


次のページで、旋回モーメントを有効に利用した旋回効率の高い走行例を解説します。
お楽しみに。


 

解説記事と画像 :小林 裕之
  
Texts and images : Hiroyuki Kobayashi



次ページで「実際の走行例を動画で解説」 を解説します
The next page is "Riding Commentary by Video"



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