今回は車体にあらかじめ手を加えて参加しました。
GRAのブログにありました、フロントフォークを留めるボルトを強度区分12.9 のボルト に
変えたところ、フロントタイヤの接地感が激変したのです。
これまではフロントフォークやステム全体が揺さぶられるように路面から衝撃を受けて いた感触から、キッチリとバネの縮みを感じるコシのある感触へと変わったのです。
これは新しいセッティングアイテムとして売れますね。
(キャブレターのジェットセッティングのような)
『 リアの車高調整 』
これを前提に前回に続き、リアサスの調整不足を補うところから再開となりました。
ダンパーの全長調整による加速フィーリングを感じる上で、伸び・縮みの規制を最弱に 設定し、サスペンションをより動くように、動きの規制は最低限であるべきと思い、 トライしました。
結果、予想以上に挙動が明らかとなり、ダンパー全長が長いと突き飛ばすような加速感、 逆に
短いと一瞬トラクションの抜ける感覚を明確に感じ取れる事が出来ました。
ここまでは直線をフル加速する事で挙動を確認していましたが、今度はコーナリングを 交えた
正方形のフィールドを周回すると、まだまだ加速が強すぎで、タイヤのゴム任せで グリップし
ているような感覚で、安心して加速できない状態でした。
徐々にダンパー全長を短く、リアサスに溜めをもたせることで、安心してアクセルを開け られ
るようになりました。
全長調整ナットの最後の調整は、手応えだけほんのわずかに動いたかどうか?の締め込み でし
た。 それでも確実に安心感が増し、周りから見るとスムーズに曲がっていたようです。
ダンパー全長が走行フィールに及ぼす影響は非常に大きいものと理解しました。
『 リアのダンパー調整 』
ダンパー全長が決まったところで、次は減衰圧による味付けに移ります。
ダンパーの伸び側規制から調整を開始し、最弱値から5クリック規制するだけで、バンクと
ハンドルの切れるスピードとの関連性が変わります。
(調整は全部で25クリックなので全体量からすればわずかな規制です)
ここでは直線走行からノーブレーキで180度ターンする事で良し悪しを測りました。
同様に縮み側も規制値を最弱から5クリックで開始し、1クリックずつ前後し、ターンを 繰り返す事でコーナリングの安心感、アクセルの開けやすさが1ステップずつ良くなって いくことを
感じ取れました。
小林代表は一連の調整を簡単でしょ?と仰いますが、ここまで余分を削ぎ落とし、確実に セッ
ティングをモノにできるメソッドを、おそらく膨大な試行錯誤の上に確立されてきたの だろう
と圧倒されました。
『 まさか!? 』
また他には、転倒時のハンドル変形を避けるためにハンドルバーを取り付けていましたが、 こ
れもハンドリングに影響を受けるとアドバイスを受け、締め付けを緩めたところコーナ リング
の安定感が改善され、まさか!?と思う改善点があることに大変驚きました。
これは様々なボルトのトルク調整にハマりそうです。
(とりあえず少し緩めてみよう!)
『 最後に 』
当日は午後からの参加で、3時間程度で撤収時間となりましたが、サスセッティングの 考え方
を見事に覆された密度の高い時間でした。
これまでメーカー基準値の前後が適正と思い込んでいましたが、体格・乗り方・車体の カスタムにより、メーカ=情報がそのまま当てはまらない事も理解できました。
最後に、帰路の高速道路でも継ぎ目を越える際、タイヤで衝撃を吸収していたこれまでの 感触ではなく、前後サスが収縮して衝撃を吸収していることが明らかに体感できました。
衝撃に耐えるのではなく、「いなす」感覚がとても心地よかったです。
次回はフロントサスのセッティングにトライしていきたいと思います。?
【 担当講師より 】
先月開催の『ライディング・セッティング クリニック』への来場・受診に続き、今回も とても熱心に取り組んで吸収された姿、見ているだけで嬉しくなりました。先ずは、その事にお礼を伝えます。
今回の 受診内容は、先月に引き続いて “ リアの車高調整 ”でした。
前回と同じ様に、「直線加速コース」 での低速からの急加速で、大よその調整を行なった後で、ブレーキを使わない 「4本四角パイロンコース」 で、バンク中に加速した際の姿勢変化をチェックし、リア の車高調整の微調整をされたのですが、前回より格段に 車高に対する感度を高められていた事に感心させられました。
リアの車高、つまり リア スイングアーム の垂れ角、が リアタイヤ の グリップ や 挙動に大きく影響するという、一般的に 見逃されている大切な“ 調整 ”を、ご自身の 適切な調整と“ 感覚 ”で習得されましたね。 しかも、リアタイヤのグリップが最も大切になる、バンク時加速時の“ グリップ感 ”と“ 挙動 ”を、
リサ サスペンション ユニット の 全長で 0.0.5 mm の違いで 暗転 する事まで感じ取られた事は、ただただ、予想以上の成果でしたね。
きっと、リアの車高がオートバイに与える影響の大きさを、理論的な説明を聞き、勉強された事と、身体センサー の 感度も高いレベルなのだと思います。 その身体センサーは、整備・セッティングは 勿論の事、ライディング でも 大きな役割を果たしますので、大切に磨き続ける事を勧めます。
磨き続ければ、他の 車両 走っている様子を観ただけで、リア の 車高 や プリロード調整 が適切に行なわれているかが 分かってきますし、タイヤ のエア圧 0.2〜0.4 Kgf/? の 狂いや、フロントフォーク の 歪み、等も“ 見えてくる ” ようになります。
そうすれば、そのライダー がブレーキ を 使ったポイント と その量 や、最も大切な タイヤ 接地面に掛かっている荷重の大きさも、きっと見えてきます。
それが、オートバイ と 付き合う時に、一番 大きな力になる“身体センサー”です。
なお、当日お伝えした様に、オートバイを 活き活きとさせられる調整箇所は、まだ多く残っています。
それらの項目を、一つひとつ、着実にこなして行けば、オートバイは完全に生まれ変わり、あなたとの距離感も一気に近く、色々な事を伝えてくれて、正しいライディング操作へと導いてくれて、ライディング も
生まれ変わる事は間違いありません。
どうぞ、オートバイと、楽しみながら、更に 良い関係になってください。
< まとめ >
整備・セッティング で 大切な事を改めて書き留めておきます。
〇 部品はあるべき位置で正しく働かせるコト、
・・ 今回、疲弊したボルトを品質が高いボルトに交換した事で生じた変化で証明されましたね
〇 セッティングはバランス取り、バランスする箇所は狭い1カ所のポイントになる
・・ リアの車高調整以外、ダンパー調整でも証明されましたね
〇 一つの要素を調整する場合には、それ以外の要素の影響を排除した、シンプルなテストが基本
・・ 走行チェックでは、ブレーキは使わず、低速で、ターン方向は一方のみ、今回の通りです
〇 チェック走行を行なう場合、平滑な路面、十分な広さとクリーン路面が大切
・・ 今回のように、周囲の交通から遮断され、集中できる環境が必要です
〇 バランスが取れた時も、そうでなかった時も、その調整内容とデータは記録する
・・ ノギスやトルクレンチの利用や、調整箇所へのマーキングがお勧めです
小林 裕之
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