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オートバイの
常識と非常識
  
Common
Sense
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車高は オートバイの操縦安定性能を左右する大切な要素で、適切な調整を行なうべきですが、正しく認識されていない為、足つき性向上の為としてなど、危険で誤った調整が横行しています

Ride height is an important factor that determines the maneuverability and stability of a motorcycle, so proper adjustment is necessary. But that lack of awareness is prevalent in dangerous and misaligned


最適なフロント車高の考え方と調整方法 / Optimum Front Ride Height and Adjustment Method Optimum Front Ride
Height is ...

VTR250の フロントフォークを分解整備した後、操縦性が変化してしまった方からの問合せがありましたので、「車高の確認と調整」の回答をしました



【 質 問 】 Question


フロントフォークを分解整備した後、バイクの曲がり方が変な感じになりました。プリロードの調整で、どう変わりますか?
 
  

【 変更箇所 】 トップキャップをホンダ製他車用イニシャルアジャスターに交換
それに合せて、スプリングカラー(スペーサー)も交換
【 症状 】 〇 曲がるためにブレーキをかけてもハンドルが切れない
〇 曲がりたい分だけハンドルを切らないと曲がれない感じ
〇 曲がるときにすんなりバンクしてくれない

                       ( 車両 : 2000年式 Honda VTR )

After overhauling the front forks, the bike seems to turn funny.
Can I adjust the preload to get it back to the way it turned before the overhaul?



最適なフロント車高の考え方と調整方法 / Optimum Front Ride Height and Adjustment Method










【 回 答 】・簡潔編  Concise Answer


フロントの1G'時の車高を測定して、分解整備前と同じ値に調整します
プリロード調整の優先度は最後になります

  

こんにちは M さん

この度は、フロントフォーク内部の仕様を変更した後、操縦性が変更前と変わってしまった事につてのお問合せですが、操縦性を左右する一番大切な要素は【車高】ですから、最初に、フロントの車高を仕様変更前と同じにする事を強くお勧めします。  
特に、一番大切な車高は【1G'車高】(乗車時車高)です。フロントフォーク内の仕様変更を行なう場合には、1G'時(乗車状態)の【車高】を変更の前後で同じに調整する事が必要です。
  
 
Measure the front ride height at 1G' and adjust to the same value as before overhaul. Preload adjustment is the last priority  

  
最適なフロント車高の考え方と調整方法 / Optimum Front Ride Height and Adjustment Method     
  
1G' 車高の調整は、フロントフォークの固定位置変更で行ないます
1G' Ride Height is adjusted by adjusting tha fixing position of the Front Fork
倒立式フロントフォーク車の車高は、「インナーチューブ露出長」からアッパーヨークからの「フォーク突出し量」を引いた値になります
The Ride Height of an inverted front fork vehicle is calculated by subtracting the "fork protrusion" from the upper yoke from the "inner tube exposed length".



 最適なフロント車高の考え方と調整方法 / Optimum Front Ride Height and Adjustment Method


 

 
【 回 答 】・具体編  Specific Answer


1G'時の車高を調整した後は、フルボトム時 車高(残ストローク量)を、
分解整備前と同じ値に調整します



最初に
乗車状態(車体を直立させ、両足はステップに置いた状態)での 1G'時 フロント車高を調整する理由は それが 操縦性の基本になるからです。その後で、【 1G'時車高 】> 【 フルボトム時 車高 】 > 【 プリロード量 】の順番で調整を進めていきます。ダンパー調整の無い VTR の場合の優先度を数字で表すと、50 :30 : 20 ほどになります。
 
  
After adjusting the ride height at 1G', adjust the ride height at full bottom to the same value as before overhaul.
  
  
最適なフロント車高の考え方と調整方法 / Optimum Front Ride Height and Adjustment Method


フルボトム時 車高 の測定方法は、安全を確保できる場所で、一定の速度(時速 40〜60 q)からフルブレーキングを行なって、フロントフォークをフルボトムさせます。この時、フォーク(インナーチューブ)に輪ゴムやグリスなどをつけておくと、フルボトム時 車高を測定する事ができます。
  
  
最適なフロント車高の考え方と調整方法 / Optimum Front Ride Height and Adjustment Method       
最適なフロント車高の考え方と調整方法 / Optimum Front Ride Height and Adjustment Method 最適なフロント車高の考え方と調整方法 / Optimum Front Ride Height and Adjustment Method

フルボトム時 車高の調整は、フォークオイル量の調整で行ないます

Adjust the Full-Bottom Ride Height by adjusting the amount of Fork Oil

 
     
フルボトム時 車高を 1G' 時車高 の次に調整する理由は、ブレーキング時や旋回時など、フロントサスペンションがストローク した時の車高を、分解整備や仕様変更前と同じにする為です。
ストロークした時の車高は、ブレーキングの程度や旋回時の速度などで変化しますが、その変化量はスプリングレート と フォーク内の エア容量によってほぼ決定されます。そして、フルボトム時のインナーチューブ露出長は、フォーク内部のエア容量によって決定しますので、測定した フルボトム時 車高を 分解整備や仕様変更前の値になる様に、フォーク内部のオイル量を調整する事で、フォーク内のエア容量をより正確に調整する事が可能になります。

    
Mさんの場合、今回の仕様変更では、フォークオイルの交換の他に イニシャルアジャスターの追加を行なっていますので、例え フォークオイルの液面高さを厳密に調整したとしても、追加したイニシャルアジャスターや それに伴う カラー(スプリングスペーサー)によって エア容量は変化してしまいますので、エア容量を正確に調整する為には、フルボトム時車高の確認・調整が必要になります。
また、市販状態でのフロントの車高と推奨する車高を、次の項、【 推奨する値 】で紹介しますので、参考にしてください。
  


 






【 推奨する値 】   Recommended Value

『 販売状態の車高 』と『 推奨する車高 』
     Standard Ride Height and Recommended Ride Height

市販状態での Mさんの車両( VTR250r)のフロント車高は、0G時、1G時、そして 1G'時 と 残ストローク量は、体重 約70s のライダの場合、下記の通りとなっています。従って市販された状態に戻す場合は、これらの数値に合せる事になります。ただし、前々回、妖怪ガレージにて行なった 調整状態に戻す場合には、“推奨する車高調整値”に調整する必要があります。正しく調整できれば、ほぼ以前と同じ操縦性に戻せるのは間違いありません。

また、この“推奨する車高調整値”は、VTR250 を走らせる場合、様々な場面で思い通りの機敏さと正確さで車体が反応してくれて、その上、安定性を充分に備えた特性が得られる値ですから、前回、Mさんも味わってくれた様に、きっと多くの人が納得する特性へと VTR250 の操縦性を磨き上げてくれる筈です。
 
 
最適なフロント車高の考え方と調整方法 / Optimum Front Ride Height and Adjustment Method
 



『 推奨する車高と体重との関係 』  
  Relationship between Recommended Values and your body weight
 
ここで、“推奨する車高”の場合、< ライダーの体重を問わず > となっている理由について説明を簡単にすると、「適正な車高は、ライダーを問わず、車両によって決まる」からです。

フロント車高だけでなく、リアの車高も、車高はオートバイの運動特性に大きく影響する要素です。つまり、走行している状態での車高が、最適な操縦性や運動バランスを導き出すための基本になりますし、全く同じ車両ならば“最適な車高(設定)”は基本的に特定の値になるのです。従ってライダーの体重には関係なく、特定の値に調整する事で、良い運動特性が得られるのです。

これは、別の視点から見ても同様の結論になります。それは、リアのプリロード調整や車高調整に始まります。リアのプリロード調整の場合、ライダーの体重を問わず、乗車状態(1G')で リアのホイールストローク量の 1/3 だけ沈み込ませて、残りストロークの 2/3 を 走行時の衝撃吸収と接地性(グリップ性)確保の為に残す調整が基本です。 つまり、ライダーを問わず、同じ車両であれば、乗車時の最適なリアの車高は同じ値になります。 これは、車高調整機能が備わった車両で、適切にアンチスクワット特性を使い、最適な接地性(グリップ性)を確保できる車高調整を行なった場合にも同じ結果になります。
そして、リアの車高に合せて、最適なバランスになる フロント車高へと調整する訳ですから、リアの車高が一定の値になるのと同様に、フロントの車高も、ライダーを問わず、一定の値になります。
  
   
Optimal rear suspension preload adjustment means that the rear 1G' ride height is set to the optimum value for that vehicle. In other words, when the same vehicle is optimally adjusted for riders of different weights, the rear 1G' ride height will be approximately the same.
And since the front ride height is adjusted in balance with the rear ride height, the optimum front 1G' ride height will be almost the same regardless of the rider's weight. In other words, the optimum ride height will be the same for the same vehicle, regardless of the rider's weight.
  
  
最適なフロント車高の考え方と調整方法 / Optimum Front Ride Height and Adjustment Method




『 推奨 プリロード量 』について  About Recommended Preload

最初に、 フロント サスペンションのプリロード量(初期荷重)は、「車輛とライダーによって、一定の値になる」という事を伝えます。 これは、リアのプリロード量も、1G'時に リアホイールの全ストローク量の 1/3 沈み込む様に調整する方法でも、ライダーの体重によってスプリングを縮めて装着する際の荷重が、例えスプリングレートの違うスプリングを装着する場合でも一定になる事と同じです。ただし、サスペンションの考え方が異なりますから、フロントサスペンションの場合は、リアの場合の様な 1/3 沈み込みルールはありません。「車輛とライダーによって、一定の値になる」という傾向があるのです。

そして、VTRの場合、体重が 約70s のライダーに適した プリロード量は 7.5 〜 8.0 Kgf の範囲に収まる筈です。つまり、Mさんの2000年型車輛 のスプリングの初期レートが 0.54 Kgf/mm (計算値)ですから、プリロードを 8.0 Kgf に合せる場合は、8.0 ÷ 0.54 = 14.8148・・・の計算から、スプリングを組み込んだ際に 約 14.8 o 縮む様に調整をすれば良い事になります。
 
 
最適なフロント車高の考え方と調整方法 / Optimum Front Ride Height and Adjustment Method
 
 
なお、プリロード量は ライダーの体重以外、ライディングのスタイルや感覚によって最適な値がが多少異なりますので、プリロード調整機構を装着されたこの機会に、調整して最適と思うプリロード量に合せてください。 ちなみに、私の VTR での好みの値は 約 7.8 Kgf 辺りです。
 
  
The optimum rear suspension preload is always the same for the same vehicle/rider combination, even with different spring rates. Similarly, the optimal value of front preload will always remain the same even if the springs are changed for the same vehicle and rider. And if you have a Honda VTR and a rider weighing about 70kg, the optimum front preload will be 7.5 to 8.0Kgf, so please refer to it.
  
  
最適なフロント車高の考え方と調整方法 / Optimum Front Ride Height and Adjustment Method

 












【 追加説明 】   Additonal Explanation


『 中間ストローク車高 』について  About Mid-Stroke Ride Height

この、中間ストローク車高とは、フロントの車高の中で、「1G' 車高」から「残ストローク車高」との間の車高の事です。 つまり、走行している際、減速する時とかコーナーに入って旋回を始めた時など、フロントフォークが沈み込んだ時の車高の事です。
 
 
最適なフロント車高の考え方と調整方法 / Optimum Front Ride Height and Adjustment Method
 
 
車高の 調整では、車体バランスを整える上で基本となる「1G' 車高」が最も大切ですが、次に大切になるのが「中間ストローク車高」で、特に旋回時には、この「中間ストローク車高」によって変化する「トレール量」によって前輪の“旋回モーメント”も変化するので、機敏で正確、安定した旋回を実現させる為には、中間ストローク車高の調節が大切になります。
  
  
The most important vehicle height adjustment is the "1G' ride height," which is the basis for balancing the vehicle body, and the next most important is the front "mid-stroke ride height." Especially when turning, the "turning moment" of the front wheels changes according to the "trail amount," which changes with the "mid-stroke ride height," so the mid-stroke ride height is important to achieve agile, accurate, and stable turning.
  
  
最適なフロント車高の考え方と調整方法 / Optimum Front Ride Height and Adjustment Method
  
  
ただ、 中間ストローク車高は走行条件によって異なる為、測定して調整を行なう事が容易ではありませんので、中間ストローク車高に影響を与える「残ストローク量 車高」の調整で間接的に調整を行なうのが一般的です。

 
 
 
 

最適な『 フルボトム時 車高 』  Optimum Full Bottom Ride Height

車高の 変化によって「トレール量」が変化しますが、この「トレール量」が小さくなり過ぎるとタイヤの方向安定性も小さくなり過ぎます。 直立走行時には直ぐに危険な状況は招きませんが、
バンクさせて旋回している際に、路面の大きな凸凹を通過した時や、思わずフロントブレーキを掛け過ぎた時には、「トレール量」が小さくなり過ぎて、フロントタイヤの安定性を失う原因になります。つまり、どんな場合でもフロントタイヤの方向安定性を失わなせない為には、最低限以上の「トレール量」・【安定限界トレール量】に保つ調整が必要になります。
  
  
最適なフロント車高の考え方と調整方法 / Optimum Front Ride Height and Adjustment Method
  
  
つまり、 どんな時でも【安定限界トレール量】を確保する為には、最適な「残ストローク量」への調整が必要になります。 これが、「フルボトム時車高」を適切な値に調整する一番大きな目的です。 ただ、Mさんの VTR に限らず、市販車両の多くは、乗り心地を販売上優先すべき性能だと考えて、フロント サスペンションの ストロークを多めに設定しているため、最も縮めたフルボトム状態での「トレール量」は不足気味です。
この【限界トレール量】以下に設定された状態の場合、先に挙げた様に、走行中のフロントサスペンションの大きな動きが生じた時、多くの場合、ライダーは大きな恐怖を味わうか、転倒など重大な事案を招きますので、適切な「フルボトム時車高」の確認と調整が大切ですし、フロントフォークを分解整備した後は、必ず「フルボトム時車高」の確認と調整が欠かせないのです。

参考までに、フロントフォークの伸び切り状態での「0G 車高」から「フルボトム時車高」までの差は、つまり フロントサスペンションのストローク量は、Mさんの VTR の場合、市販状態では、約 120 o ですが、前回 お勧めの車高設定を行なった場合、訳 100 o 程度になる筈です。そのため、一般的な意味での乗り心地は多少損なわれますが、高速道路での旋回走行時、路面上の段差のある落下物を乗り越えても、車体の安定性を大きく損なう事は少なくなります。 同様に、峠道の急な下り坂、危険回避の為の急ブレーキが必要になった場合でも、大きく安定性を失う事は少なくなるなど、もしもの時の安全性を考えると、【限界トレール量】を確保する為の「フルボトム時車高」の調整は、とても大切な事です。

 
The main purpose of adjusting the full bottom vehicle height is to ensure the directional stability of the front tires. "Trail amount" is one of the factors that create the directional stability of the front tire, but it has a characteristic that changes according to changes in the front ride height. And if the trail amount is less than the [stability limit trail amount] at full bottom, the stability of the front tire is easily lost, which may cause a fall.

Therefore, it is important to set and adjust the full bottom ride height, so that it does not fall below the [stability limit trail amount] under any driving conditions. But, in general, in the case of modern road motorcycles, the stroke amount is set to 120mm to improve the ride comfort, so there are many vehicles whose full bottom trail amount is less than the [stability limit trail amount]. If you want to drive safely, it is recommended to increase the vehicle height at full bump by 10mm or more.  
  
  
  
フロントフォークの分解整備の際、フォークオイルの油面高さ調整
では、フォーク内部のエア容量を正確に合わせる事は不可能です。
操縦性と安全性の為にも、残ストローク量の確認調整は必要です。
When disassembling and servicing the front fork, it is impossible to accurately adjust the air volume inside the fork by adjusting the oil level. For optimum maintenance, it is necessary to check and adjust the ride height at full bottom.








解説記事と画像 :小林 裕之
  
Texts and images : Hiroyuki Kobayashi






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