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Common sense and insane

オートバイは、自動車とは異なり、安全な走行のために、ライダーの体格や体重に合わせた車体各部の適切な調整が必要です。特に、運動性能の高い車両の場合は欠かせない作業で、それを怠ると楽しく走れないだけでなく危険性が高まります。車両メーカーを始めとする二輪業界には、適切な調整作業の啓発活動が以前より強く求められています。

  Unlike automobiles, motorcycles need to be adjusted appropriately to fit the
  rider's physique and weight in order to drive safely.Especially in high-performance
  vehicles, it is an indispensable task, and if you neglect it, you will not only not be
  able to enjoy driving but also increase the risk.


  Ninja1000 のセッティングについて
     / 新車を買った彼女
  (その3)

  FAQ, Ninja1000 Settings Part 3.



  Ninja 1000 を新車で購入予定の方から、「サスペンションセッティングは ?」と
  質問がありました。 その質問に対して、Q&A形式で数回のわたってやり取りをしました
  ので、その全文を紹介します。          < GRA公式ブログサイトより転載 >



【 質 問 】 Question

こんばんは。
昨日はお忙しい中返信をありがとうございました。

すごく分かりやすく教えてくださったので、週末に、時間が取れたら早速やろうと 思います。
フロントのイニシャルを最弱と最強にして見て、オートバイがバンクした時の感覚 を覚えて(感じて)、イニシャルで車高を調整するのではなくて、フロントフォークの 取り付け位置を変えていい状態にするということですね。

けれども、イニシャルを調整することがあれば、またフォークの取り付け位置も変わ ったりするかもってことで理解いたしました。

前後のタイヤが同時に「ターンを開始する」というのがイメージできませんが、
(リアタイヤがターンするってなんやろう?)
実際にやって見て、どういう風に自分が感じるのかやって見たいと思います。

デジカメ動画も併用して見ます。
やってみて分かりにくいところは、またどうぞ教えてください。

簡単ですみません。
ありがとうございました。


                               キヨ ( 仮名 )
 
    

Ninja1000 のセッティングについて、FAQ、 (新車を買った彼女)






【 回 答 】3 Answer 3

こんばんは! キヨ さん

先日の 連絡に対して、早速に返信をくださり、ありがとうございます。
私がこうして勧めている セッティング手法は、数多ある 書籍などには一切掲載し てありませんが、私が理論的に独自に生み出した手法ですが、数多く開催してきた イベント ・『 セッティング練習会 』 で実践して 数多くの人と様々な車種で実効を 残してきたものです。

どうぞ、最後まで責任を持って対応しますので、よろしくお願い致します。


    *  *  *  *  *
   

今日は、
ターン という現象について、更に詳しく考えてみましょう。
   
  
【 前後の車高バランスは、なぜ大切? 】

オートバイはバンクさせる事でターン (旋回)をします。
その時、ターンの役割を担っているのが 前後のタイヤです。
そして、バンクした(傾いた)前後のタイヤが、ターンする(曲がる)ための “ 力 ” を 発揮しているのは 理解できると思います。

では、ターンをしている最中ではなく、ターンを始める瞬間を考えて下さい。
ライダーがバンクさせ始めた瞬間、前後のタイヤがきちんと “ 息を合わせて ” 同時 にターンの状態になるのが一番安定しています。 けれども、今回の 「前後の車高バランス」 がとれていないと、ターンを始めた瞬間に 不安定な動きが現れて、ライダーが不安に操作のし難さを覚えるだけでなく、オート バイの能力を安全に発揮できない状況にもなるのです。
だから、「前後の車高バランス」 を きちんととる事は大切です。

  
  
【 前後の車高バランスがとれてないと、どうなる? 】

では、どうして 前後が同時にターンを始めない場合があるかと言えば、フロントの タイヤが 左右に切れる操舵機構がある事に深く関係しています。 つまり、操舵機構が無ければ、同時にバンクは始めますが、効率良く曲がりません。 バンク動作に合わせて自動的にフロントタイヤが切れ込んでいく、自動操舵の働き がオートバイには組み込んであるので、効率良く前後のタイヤがターンできるのです。

しかし、その自動操舵の働きが バンクさせたタイミングより遅れたり、またはライダー が意図したより早目に出てしまうと、スムーズにターン状態へと入る事が難しくなる のです。 つまり、ライダーがバンクさせる動きに合わせて、フロントタイヤが自動的に操舵す る動きが出るタイミングを調整すると、スムーズに安定してターンを行なう事ができ るのです。

  
  
【 どうして? 前後車高の違いでバランスが狂うの 】

フロントタイヤをバンクさせる動作と、それによって フロントタイヤが自動的に操舵を 始める動きとは、ほぼ一緒に始まる必要があり、その動きの バランスが悪いと、ラ イダーにとってはバンクさせるのを不安に感じ、乗り難いオートバイになりますし、実 際にそういう状態のコンディションの車両は珍しくありません。

では、どうして フロントの車高の調整で、そのバランスが変化するかを説明します。
フロントタイヤは 2本のフロントフォークに支えられていて、そのフロントフォークは 操舵する部品(フロントステム・ブラケット)を通じて車体(フレーム)に固定されてい ます。 ですから、ライダーが車体(フレーム)をバンクさせると、フロントフォークもバンクし て、フロントタイヤもバンクをする事は理解できるでしょう。

そこで、車体(フレーム)とフロントフォークをつなぐ場所を変更した場合、どういう 動きになるかを一度想像してみてください。
  
  
( ・・・ 想像しやすいように、極端な例を考えてみましょう )
  
  
1).フロントフォークの根本近くと 車体(フレーム)とをつないでバンクさせる場合と、
2)フロントフォークを 50pほど長く上に伸ばし、その上部と車体とをつないでバン ク
   させる場合とを想像してみましょう。

では最初に、車体の前方からフロントタイヤとフロントフォークを見て、それを一本 の “ 棒 ” だと考えてみて下さい。 タイヤが路面に接地している部分を支点にして左右に振れる(バンク)する “ 棒 ” 状の部品と考えてみましょう。
そうすると、 1). の場合の様に、タイヤの接地面に近い所に車体(フレーム)がバン クする動きを与えると、とても素早くバンクする事になり、自動操舵が遅れて反応 する事になります。 逆に、2) の場合の様に、タイヤの接地面からとても遠い所にバンクさせる動きを 与えても、実際にタイヤがバンクする動きは遅くなり、自動的に始まる操舵はバン ク角が少ないとより大きく操舵されるため、ライダーが意図した以上に早目に操舵 が出る状態になります。

以上、極端な例で考えましたが、実際に前後の車高バランスが整う領域辺りでは、 それらの車高の少しの違いで、上記の様に 自動操舵が始まるタイミングや量が 変わり、前後のターンのバランスが変化してくるのです。

  
  
【 バランスの変化は誰でも分かるの? 】

具体的に言えば、バランスがとれる付近では、フロントフォークの取り付け位置の 1o の違いでさえ、殆どの人は(きちんと条件を整えれば) 感じ取れますし、中に は 0.5 o以下の 精度でバランス取りを行なえる人も少なくありません。 それほど、人間の感覚は 優れているのです。

( セッティング作業は、車体のあらゆる部品や要素ごとに、このバランスを整えていって、 最終的に 全体で安定したバランスを生み出す作業なのです )


・ ・ 以下、注意点を列挙します ・ ・
  
  
 ただし、天秤はかり の例で理解できると思いますが、バランスが大きく崩れた ところで
   は、ちょっとした調整では変化はありません。 バランスが 整う領域では 微妙な違いが
   はっきりと変化として現れます。

 また、確認作業を行なう場合には、低速で加減速の動作を行なわず、直立 状態からスムー
   ズに (一気に)左右 どちらかに バンクさせる瞬間だけ、 バンランスを 感じ取る必要が
   ありますので、 それ以外の要素 ( 加速、ブレーキング、クラッチ操作、異なった路面
   状況 または路面の凹凸の 変化 など )は 極力除外する必要があります。

 テスト・確認作業を行なう場所も、前後左右 が ほぼ水平で、周りの環境に よって乗って
   いるライダーの操作や感性に影響を与えない場所を選んでください。

 左右どちらか一方に固定するのも、車体やライダーの左右差による影響を 除外するためで、
   その左右差は “ 車高バランス ” で調整するものではなく、 それ自体の原因を探って 個別
  に解消すべき事柄です。 仮に、一旦 車高バランスを調整した後、左右差を 解消したために
  “ 車高バランス”に変化が出た場合には、微小な調整になりますが、 再度 調整しなおしま
  す。

 前回も記しましたが、セッティング作業で最も大切な事は、バランス調整を する事でも、
  その調整後のデータを大切に残す事でもなく、それらの バランスの違いを感じる感覚を養う
  事です。 その感覚を身に付ければ、別な車両に乗り換えた場合だけでなく、タイヤの 銘柄
  を変更した場合 など、あらゆる場面で活きてくるのです



    *  *  *  *  *


以上、ここまで書いた事から理解してもらえると思いますが、これらの理論と感覚が 必要な作業は、ライダー自身がそれをきちんと意識している事が大切ですし、一般 的な オートバイ販売店の方には 経験と知識の範囲外の作業になります。

どうぞ、好きなオートバイの 整体バランスをきちんと整えて、本来 備えている能力 を 安全にきちんと発揮できる状態まで高めて、楽しいオートバイライフを実現させて いって下さい。


    *  *  *  *  *
  

追伸 1. ビデオ 撮影の際には、 走行する車両の 前方斜め、 約 10〜15 度 の アングルで
    撮影して下さい。 この時、 前後タイヤ を主体に撮影できるアングルを選び、車体
    本体やライダーの映像は全く不要です

追伸 2. フロントの車高の調整前後 の 映像と、 それぞれの調整状態別に自身 の感想を添え
    てください

追伸 3. いずれ、他の方の参考になるように Webサイトでの 展開を考えていま すので、
    車体全体や 車体各部の 画像を いつの日か 提供してもらえる と助かります。








解説記事と画像 :小林 裕之
  
Texts and images : Hiroyuki Kobayashi




わからない用語は、ページ下段の【用語の解説辞典】で確認できます
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