こんばんは! キヨ さん
先日の 連絡に対して、早速に返信をくださり、ありがとうございます。
私がこうして勧めている セッティング手法は、数多ある 書籍などには一切掲載し てありませんが、私が理論的に独自に生み出した手法ですが、数多く開催してきた イベント ・『 セッティング練習会 』 で実践して 数多くの人と様々な車種で実効を 残してきたものです。
どうぞ、最後まで責任を持って対応しますので、よろしくお願い致します。
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今日は、ターン という現象について、更に詳しく考えてみましょう。
【 前後の車高バランスは、なぜ大切? 】
オートバイはバンクさせる事でターン (旋回)をします。
その時、ターンの役割を担っているのが 前後のタイヤです。
そして、バンクした(傾いた)前後のタイヤが、ターンする(曲がる)ための “ 力 ” を 発揮しているのは 理解できると思います。
では、ターンをしている最中ではなく、ターンを始める瞬間を考えて下さい。
ライダーがバンクさせ始めた瞬間、前後のタイヤがきちんと “ 息を合わせて ” 同時 にターンの状態になるのが一番安定しています。
けれども、今回の 「前後の車高バランス」 がとれていないと、ターンを始めた瞬間に 不安定な動きが現れて、ライダーが不安に操作のし難さを覚えるだけでなく、オート バイの能力を安全に発揮できない状況にもなるのです。
だから、「前後の車高バランス」 を きちんととる事は大切です。
【 前後の車高バランスがとれてないと、どうなる? 】
では、どうして 前後が同時にターンを始めない場合があるかと言えば、フロントの タイヤが 左右に切れる操舵機構がある事に深く関係しています。 つまり、操舵機構が無ければ、同時にバンクは始めますが、効率良く曲がりません。 バンク動作に合わせて自動的にフロントタイヤが切れ込んでいく、自動操舵の働き がオートバイには組み込んであるので、効率良く前後のタイヤがターンできるのです。
しかし、その自動操舵の働きが バンクさせたタイミングより遅れたり、またはライダー が意図したより早目に出てしまうと、スムーズにターン状態へと入る事が難しくなる のです。 つまり、ライダーがバンクさせる動きに合わせて、フロントタイヤが自動的に操舵す る動きが出るタイミングを調整すると、スムーズに安定してターンを行なう事ができ るのです。
【 どうして? 前後車高の違いでバランスが狂うの 】
フロントタイヤをバンクさせる動作と、それによって フロントタイヤが自動的に操舵を 始める動きとは、ほぼ一緒に始まる必要があり、その動きの バランスが悪いと、ラ イダーにとってはバンクさせるのを不安に感じ、乗り難いオートバイになりますし、実 際にそういう状態のコンディションの車両は珍しくありません。
では、どうして フロントの車高の調整で、そのバランスが変化するかを説明します。
フロントタイヤは 2本のフロントフォークに支えられていて、そのフロントフォークは 操舵する部品(フロントステム・ブラケット)を通じて車体(フレーム)に固定されてい ます。 ですから、ライダーが車体(フレーム)をバンクさせると、フロントフォークもバンクし て、フロントタイヤもバンクをする事は理解できるでしょう。
そこで、車体(フレーム)とフロントフォークをつなぐ場所を変更した場合、どういう 動きになるかを一度想像してみてください。
( ・・・ 想像しやすいように、極端な例を考えてみましょう )
1).フロントフォークの根本近くと 車体(フレーム)とをつないでバンクさせる場合と、
2)フロントフォークを 50pほど長く上に伸ばし、その上部と車体とをつないでバン ク
させる場合とを想像してみましょう。
では最初に、車体の前方からフロントタイヤとフロントフォークを見て、それを一本 の “ 棒 ” だと考えてみて下さい。 タイヤが路面に接地している部分を支点にして左右に振れる(バンク)する “ 棒 ” 状の部品と考えてみましょう。
そうすると、 1). の場合の様に、タイヤの接地面に近い所に車体(フレーム)がバン クする動きを与えると、とても素早くバンクする事になり、自動操舵が遅れて反応 する事になります。 逆に、2) の場合の様に、タイヤの接地面からとても遠い所にバンクさせる動きを 与えても、実際にタイヤがバンクする動きは遅くなり、自動的に始まる操舵はバン ク角が少ないとより大きく操舵されるため、ライダーが意図した以上に早目に操舵 が出る状態になります。
以上、極端な例で考えましたが、実際に前後の車高バランスが整う領域辺りでは、 それらの車高の少しの違いで、上記の様に 自動操舵が始まるタイミングや量が 変わり、前後のターンのバランスが変化してくるのです。
【 バランスの変化は誰でも分かるの? 】
具体的に言えば、バランスがとれる付近では、フロントフォークの取り付け位置の 1o の違いでさえ、殆どの人は(きちんと条件を整えれば) 感じ取れますし、中に は 0.5 o以下の 精度でバランス取りを行なえる人も少なくありません。 それほど、人間の感覚は 優れているのです。
( セッティング作業は、車体のあらゆる部品や要素ごとに、このバランスを整えていって、 最終的に 全体で安定したバランスを生み出す作業なのです )
・ ・ 以下、注意点を列挙します ・ ・
★ ただし、天秤はかり の例で理解できると思いますが、バランスが大きく崩れた ところで
は、ちょっとした調整では変化はありません。 バランスが 整う領域では 微妙な違いが
はっきりと変化として現れます。
★ また、確認作業を行なう場合には、低速で加減速の動作を行なわず、直立 状態からスムー
ズに (一気に)左右 どちらかに バンクさせる瞬間だけ、 バンランスを 感じ取る必要が
ありますので、 それ以外の要素 ( 加速、ブレーキング、クラッチ操作、異なった路面
状況 または路面の凹凸の 変化 など )は 極力除外する必要があります。
★ テスト・確認作業を行なう場所も、前後左右 が ほぼ水平で、周りの環境に よって乗って
いるライダーの操作や感性に影響を与えない場所を選んでください。
★ 左右どちらか一方に固定するのも、車体やライダーの左右差による影響を 除外するためで、
その左右差は “ 車高バランス ” で調整するものではなく、 それ自体の原因を探って 個別
に解消すべき事柄です。 仮に、一旦 車高バランスを調整した後、左右差を 解消したために
“ 車高バランス”に変化が出た場合には、微小な調整になりますが、 再度 調整しなおしま
す。
★ 前回も記しましたが、セッティング作業で最も大切な事は、バランス調整を する事でも、
その調整後のデータを大切に残す事でもなく、それらの バランスの違いを感じる感覚を養う
事です。 その感覚を身に付ければ、別な車両に乗り換えた場合だけでなく、タイヤの 銘柄
を変更した場合 など、あらゆる場面で活きてくるのです
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以上、ここまで書いた事から理解してもらえると思いますが、これらの理論と感覚が 必要な作業は、ライダー自身がそれをきちんと意識している事が大切ですし、一般 的な オートバイ販売店の方には 経験と知識の範囲外の作業になります。
どうぞ、好きなオートバイの 整体バランスをきちんと整えて、本来 備えている能力 を 安全にきちんと発揮できる状態まで高めて、楽しいオートバイライフを実現させて いって下さい。
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追伸 1. ビデオ 撮影の際には、 走行する車両の 前方斜め、 約 10〜15 度 の アングルで
撮影して下さい。 この時、 前後タイヤ を主体に撮影できるアングルを選び、車体
本体やライダーの映像は全く不要です
追伸 2. フロントの車高の調整前後 の 映像と、 それぞれの調整状態別に自身 の感想を添え
てください
追伸 3. いずれ、他の方の参考になるように Webサイトでの 展開を考えていま すので、
車体全体や 車体各部の 画像を いつの日か 提供してもらえる と助かります。 |