恐らく、今回ご質問の方の場合には無関係と思いますが、整備の状態によっては 指摘の偏摩耗は発生し易くなります。
〇 その一つは、「 タイヤのエア圧(内圧)管理 」です。
タイヤの構造の解説の際、タイヤ各部は剛性を保つ為に工夫をされていると書きましたが、タイヤを本来の剛性(弾性)に保つには “ エア圧 ” が必須条件です。
エア圧を適切に保つ事で、タイヤ設計時に設定された本来の性能が発揮される様になっていて、仮に、本来のエア圧より低い設定で使用した場合には、大きな荷重が掛かりやすいトレッド端部の摩耗が進み易くなります。
〇 二つ目は、「フォークオイルの整備」です。
フロントフォークの適切な整備は、オートバイの操縦性や安定性に大きな影響を与えますが、その中で意外に軽視されているのが、“ フォークオイルの整備 ” です。
フォークオイルは、その名の通り組成はオイルで、エンジンオイルと同様に粘性や潤滑作用、緩衝作用や清浄作用の働きが任されていて、その性能は使用日数(酸化日数)と使用頻度(距離)によって劣化が進みます。
仮に、劣化したままのフォークオイルで走行した場合、フォーク内部の全ての部品の摩耗を進めるだけでなく、トレッド面の接地特性(ロードホールディング特性)が悪化して、確実に偏摩耗は進行し続けます。
フロントフォークオイルの交換サイクルは、安全という観点で考えても、エンジンパワーの損失よりタイヤのグリップパワーの損失は人の健康や生命に大きく関わる事からも、エンジンオイルと同等かそれ以下の走行距離を目処に交換するべきと思いますし、それが快適な走行と適切なライディング技術の習得にも効果的に働くと信じています。
〇 そして、三つ目は、「フロントフォークの整列」です。
2本のフロントフォークで構成されているフロントサスペンションですが、とても残念な事に、完全に平行であるべき 2本のフロントフォークは、平行ではなく、歪んで装着されています。
その歪みによって、フロントサスペンションがストロークする度に、フロントタイヤは左右への操舵を強制されています。
そのため、左右のターン(旋回)特性が異なるだけでなく、左右で操舵角が異なり、左右でタイヤの摩耗が異なってしまいます。
仮に、左右の旋回頻度、距離が大きく変わらないのに、指摘の “偏摩耗”の発生時期や大きさなどが左右で異なったり、左右の旋回・ターン時の操縦特性が異なる場合には、フロントフォークの歪みが大きく影響していると言えますので、「フロントフォークの整列」を強くお勧めします。
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