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いつまでも、楽しく、安全な、オートバイライフの
環境作りに必要な事を、4項目に分けて解説します

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Common sense and insane

オートバイは四輪車以上に繊細なバランスの乗り物です。構成する全ての部品、車体の寸法設計、駆動方式などが協力しあって乗り味や操縦安定性を生み出しています。しかし、販売が至上命題のメーカー広報や二輪ライターはそれらを無視して、特定の要素や仕様だけでオートバイを語りがちですが、それは大きな過ちです。

 Motorcycles are more delicately balanced vehicles than four-wheeled vehicles.
 All the constituent parts, body size design, drive system, etc. cooperate to create
 ride quality and steering stability. However, maker public relations and motorcycle
 writers, whose sales are the highest priority, tend to ignore them and talk about
 motorcycles only with specific elements and specifications, which is a big mistake.



 <Q&A>
 
駆動方式による車体挙動の違いは ?

  Q&A  about Reaction of Driving Force



  オートバイのライディングには四輪車以上に細かな配慮や考察が必要です
  「定説」や「都市伝説」を鵜呑みにせず、正しい理解で楽しく安全に過ごしましょう




【 質 問 】 Question


チェーンドライブではスロットルを開けるとリアが沈み、シャフトドライブではスロットルを開けるとリアが浮くと言われています。何故ですか。
また最近のシャフトドライブではリアが浮くような挙動はほどんどなくなりました。何故ですか。
 
 

  It is said that in chain-driven vehicles, the rear sinks when the throttle is opened, and in shaft-driven vehicles, the rear floats when the throttle is opened. why.
Also, in recent shaft-driven vehicles, the behavior that the rear floats has almost disappeared. Why is that?
 











【 解析 2】 Analysis 2. シャフトドライブ車の車体挙動 
               Body behavior by shaft
drive 



シャフトドライブ車には「リアが浮く」という定説が蔓延していますが、
それは一部の車両の挙動であり特徴ある欠点です


 
「リアが沈む」とか「リアが上がる」というのは、オートバイで体験する車体挙動の一つです。
ここで注目したい事は、「リアが沈む・上がる」という現象は、エンジンからの駆動力を駆動輪
(一般にはリアタイヤ)に伝えた時、その駆動力の“反力”によって発生している事です。
そして、この“反力”が働く向きや大きさを考える事が、オートバイの車体挙動を正確に理解をする事になり、それが リアタイヤのグリップを失わず、転倒の危険性の少ない適切な車体セッティングの解析になるのです。

では、ここでは、以下の 3通りの条件設定をして考察を進めましょう。
    
  1. 駆動輪が固定されている場合  when the Drive Wheel is fixd
  2. ドライブシャフトの特性による影響  Effects of Drive Shaft  
  3. エンジンの出力軸の配置形式による影響  Effects of Output Axis Placement

  
 
  
 
1. 駆動輪が固定されている場合 (完全停止)

Vehicle Befavior when the Drive Wheel is fixd


最初に、
質問文にあった様な「スロットルを開けると ・・」の現象の多くは停止時に駆動力を駆動輪(多くはリアタイヤ)にかけた時と、走行中に急加速などで一気に大きな駆動力を与えた時の二通りの状況が考えられます。質問ではその点が明確にされていないので、停止時の場合と走行時のそれぞれで考えてみましょう。
そして、停止時の場合には、ブレーキ以外の何らかの方法で駆動輪(タイヤ)が固定されている場合とブレーキで停止している場合に分けて、先ずはブレーキは使わない場合を想定します。

そう考えると、駆動輪・リアタイヤ(ホイール)は大地と一体化しているので、駆動輪を地球と見立てて、その地球に繋がったシャフト(シャフトドライブ車の駆動軸)をエンジンの駆動力で回すのと同じですから、下図の様なイメージになります。
  
 

  
 
上の図では、
多くのシャフトドライブ車のシャフトの回転方向は進行方向に向かって左(反時計方向)に回転するので、その“反力”は右(時計の回転方向)になる様子を表しています。 つまり、多くのシャフトドライブ車では、リアタイヤ(駆動輪)を完全に固定した状態でエンジンからの駆動力をシャフトに伝えると、エンジンには進行方向に向かって右へと回転する力が働くのです。

すると、質問にあった「シャフトドライブはリアが浮く」という現象には繋がりません。
エンジンを回そうとする力が働くのは間違いないのですが、それとは別の“反力”を探す必要がありそうです。 そこで、そのシャフトが繋がっているリアホイール側の構造を考えてみました。

駆動用のシャフトの回転をホイールの回転へと転換する仕組み・機構の中で、一番使われている方法が下図で示す「リングギア」と「べベルギア(傘歯車)」の組み合わせです。
 
 

 
 
大きなドーナッツ状の「リングギア」をホイール側につけて、エンジンからの出力を伝えてきたシャフトの先端に「べベルギア」をつけて組合せ、シャフトを回すとホイールが回る仕組みです。

ホイールに取り付けられたリングギアが全く動かない時、シャフトが回転しようとすれば、べベルギアハリングギアに沿って走ろうとします。このべベルギアの動きは、実際のオートバイの場合には上の方向へ向けて走る動きです。この動きがシャフトに伝わって、エンジン側をシャフトの回転方向とは逆の向きへ回転させると同時に、上方へと動かす力になって働く可能性もありますが、エンジンやエンジンを固定している車体が力を受けても、「リアが浮く」という力にはなりません。





では、解析を元に戻してみましょう。上の画像を見てください。この車両はシャフトドライブ車ですがリアサスペンションはありません。その為、駆動力の“反力”でエンジンは動かされますが、サスペンションは無いので、駆動輪(リアホイール)を固定せず、通常の走行を行なったとしても、「リアが浮く」ような現象が起きる事は無いと言えます。

つまり、1950年代以前の シャフトドライブ車では、「リアが浮く」という車体挙動は無かった事は明らかです。 1950年代以降になってリアサスペンションが装着されるようになってから、「リアが浮く」という挙動が感じられる様になったと思われますが、チェーン駆動のページで説明した通り、サスペンションの形式や設計によって車体の挙動は変化するので、リアサスペンションが装着されていても、一概に「シャフトドライブ車はリアが浮く」とは言えないのです。
 
リアサスペンションが装着されていない場合にリアが浮く力が働かない事は、シャフトドライブ方式の自転車を走らせるイメージをすると更に理解できるでしょう。



 
  
このままでは、シャフトドライブ車で言われ続けている謎の挙動の解明になりませんので、次項で「ドライブシャフト」を利用した駆動方式に特有の特性や癖、弊害を詳しく解析してみましょう。
  
  
  When the rear drive wheel is fixed and the drive force is transmitted, the behavior of the shaft drive vehicle is different from that of the chain drive vehicle, where the engine and the body are rotated in the opposite direction of the drive shaft. However, the force that changes the rear height does not work.
In the next section, I will analyze the characteristics and habits of driveshaft drive in detail.
 


 
 
 
 
 
2. ドライブシャフトの特性による影響

Effects of Drive Shaft Specific Caharacteristics

  
最初に、一般的に使われているドライブシャフトの仕組み・構造から考えてみましょう。

ドライブシャフトとは、その名前の如く棒状か円筒形の部品・シャフトを回転させて、力を伝える為の部品であり機構です。この機構は、決してオートバイの駆動だけに利用されているわけではなく、殆ど全ての四輪車から身の周りの電化製品に至るまで、あらゆる製品で活用されています。

そして、それらの多くの場合で、動力の伝達方向の自由度を上げる為に「継手」と呼ばれる機構が組み込まれていて。例えば FF駆動方式の乗用車の場合には、前輪のサスペンションによる動きを許し、左右への操舵を可能しているのもこの「継手」です。図で紹介している形式は最も基本的なユニバーサルジョイントと呼ばれる方式ですが、乗用車の場合は駆動力の伝達効率を高め伝達ロスを減らす為に緻密な様々な開発が続けられている箇所で、別名「等速ジョイント」と呼ばれている箇所です。               <出典 : Wikipedia>

では、簡単な紹介はここまでにして、シャフトドライブの特性、特に「継手」が持つ特性について考えてみましょう。






■ シャフトドライブによるトルク リアクション ■  Torque Reaction

「継手」を使わず、まっすぐな棒・シャフトで動力を伝える場合には発生し難いのですが、「継手」が組み込まれたドライブシャフトを利用した場合、避けられない現象が「トルクリアクション」という独特の現象です。

真っ直ぐな棒・シャフトであれば、伝える駆動力を急に変化させてもシャフトに大きな変化は起きません。が、途中に「継手」が組み込まれていて、その上、下の図の様に継手の前後で角度がついている場合に、伝える駆動力を急に変化させると継手部を中心にして継手角度を変化させようとする力が発生して、その力によって起きる現象が「トルクリアクション」と呼ばれています。
 
この「継手」と「トルクリアクション」の関係を、会社組織に例えると理解しやすいかも知れません。つまり、社長から直接に現場担当社員に指示をする方式ではなく、課長などの中間管理職を通じて現場担当社員へ指示を伝える方式が「継手」を使ったドライブシャフトに似ています。
いつもの業務をこなすだけならば、継手役の中間管理職が現場担当者に分かりやすい様に社長の指示を伝える事は出来ます。しかし、社長が急に違う指示をしたり仕事を増やしたりすると、中間管理職は指示を理解して現場担当者も理解できる様に正しく伝えるのに必ず一瞬は苦労する筈です。そして、この時の継手の苦難や現場担当者の誤った対応で、思ってもいなかった結果が生まれる時があります。こんな一連の反動がトルクリアクションだと言えるのです。

一方、トルクリアクションは駆動力を急に増減させた場合だけに発生する現象ではありません。駆動される側のホイールやタイヤ、ギアなどの駆動系に、外部から力が作用した場合にもトルクリアクションは発生します。これも、会社組織で中間管理職が抱えている現象とよく似てますね。





つまり、伝える駆動力(トルク)が一定していて、エンジン側と後輪側が一定の速度で回転している限りは、特に大きな問題は発生しません。が、エンジン側から急に大きな駆動力(トルク)を与えたり、リアブレーキを強くかけたり、リアタイヤが路面ギャップに遭遇した場合など、エンジン側と後輪側での力(トルク)に大きな違いが発生すると、継手(ジョイント)が伝えるトルク変動が大きく増幅され、継手部には様々な方向の力が余分に働き、不安定な状態になります。
そして、この不安定な状態の時に、シャフトや駆動系から何らかの力や作用を“きっかけ”にして発生する現象が「トルクリアクション」と呼ばれる車体挙動です。

この「トルクリアクション」がシャフトドライブ車の「リアが浮く」という感覚、つまりリアサスペンションが伸びて車体後部が上に持ち上げられる現象にどう関係したのか? そして、その現象に対してメーカー設計者はどの様に対処しているのかを解析してみましょう。








■ トルクリアクションと都市伝説 ■ False theories of torque reaction

最初に、「シャフトドライブ車は必ずリアが浮く挙動を必ず引き起こす」とは言えない事を改めて伝えておきます。実際に、サスペンションが無いかストローク量が極端に短い車両の場合には発生しませんし、サスペンション形式やエンジン形式によってはトルクリアクションは殆ど問題にはならないからです。

では、この「トルクリアクション」現象が顕著に出て、「シャフトドライブはリアが浮く」という都市伝説の原因となったと思われる車両を紹介します。





上の車両は、
BMW社が1970年代に製造販売していた車両です。
今も名車と評される前モデルからエンジン排気量を増やして出力も一気に高め、台頭する日本車勢に対抗するべく開発された車両ですが、トルクリアクションを発生させやすい幾つかの特徴を見る事ができます。

一つは、ドライブシャフトが内部を通っているスイングアームの短さです。スイングアームが短いと車体挙動による影響が現れやすく、動力を路面に伝えるタイヤドレッド面から反力によって、車軸を中心にスイングアームを回転させて、「リアが浮き上がる」ような車体挙動は発生しやすくなります。 二つ目は、エンジン側と後輪側を繋ぐドライブシャフトの継手角度が大きい点です。この継手角度が大きい程にトルクリアクションを誘発しやすい事は説明した通りです。三つ目を挙げるならば、ドライブシャフトが内部を通っているスイングアーム部(トルクチューブ)が細い事です。ドライブシャフト周辺の構造物の剛性が低い程にトルクリアクションを許容するからです。

恐らく、エンジン排気量と出力を高めた為に「トルクリアクション」がはっきりと顔を出すようになり、更には クランクマス(質量)やフライホイール質量が増えた事、そして後で述べる“直列配列”というこの車両のエンジンと駆動系の構成も重なり、シャフトドライブ車は「リアが浮く」という定説を生み、それがこの系統の車両の「乗り味」として親しまれたのでしょう。

しかし、当時、一気に変化した時代の波が、「乗り味」として済ましておけなかったのでしょう。
リアサスペンションが無かった時代には「トルクリアクション」の弊害は無く、サスペンションが標準装着になっても1970年代までの ホイールストローク量が少なかった時代には目立たなかったものの、ストローク量が100mmに迫る様になると弊害が顔を現す様になり、操縦性、安定性などで問題や危険性が指摘され、次から次へと解決策が施されてきたと思われます。

では、次の項で、1990年代以降に施された対策を解析してみましょう。この時代は高出力化と高速化が進み、操縦性や安定性の向上のためにリアホイールのストローク量は 120mmが一般的になった時代で、特に市販オフロード仕様車は更に大きなストローク量の設定が施され、エンジン出力やタイヤ性能の向上とも相まって、一層、トルクリアクション対策は必須となった時代です。そんな時代背景をベースに、シャフトドライブ車のトルクリアクションを低減させる対策がどの進められてきたかを簡単に見てみましょう。







■ トルク リアクションの低減策 ■ Measures to reduce torque rection

前出の
車両と同じく、シャフトドライブ車を長年製造し続け、今も多くの現行販売車種を揃えている 独・BMW社の車両を例に挙げて、低減策の幾つかを解析しましょう。





一気に、
20年以上飛ばして、上の画像の車両を紹介します。それまでも横置き3気筒エンジンの Kシリーズでも意欲的な対策が施されていますが、1990年代後半に発売されたこの車両は更に特徴ある対策が施されているのです。
 
以前の画像と見較べて気付いた人も多いと思いますが、一番目立つのが長くなったスイングアームで、これでリアサスペンションがストロークした際の継手の角度変化を抑え、トルクリアクションの発生機会を減らせるのは間違いありません。次に、そのドライブシャフトが内部を通っているスイングアームが太く丈夫になっている事が見て取れます。径が大きくなっているだけでなく、駆動用のギアユニットケース(リアホイール中央部、リングギアとべベルギアが収まっています)とを結ぶボルトの本数が多くボルト長も長く、締結剛性に配慮している様子が窺われ、スイングアームと言うよりも、当時の高性能四輪車でよく見かけられたトルクチューブと呼んで良い構造物に変化しています。これで、トルクリアクションだけでなく、操縦性は随分と変化したでしょう。
そして、一見して目立たない変化ですが、エンジンからの出力軸が後傾する様になっている事も見逃せない点です。これによって継手の角度変化を最少に抑えるという狙いは明らかです。

そういう特徴から、この車両でトルクリアクションの低減という目標はある程度は達成したのでしょうが、まだ対策は必要だったのでしょう。この車両で得た経験と、前出の同社にとっては革新的モデルのKシリーズで採用された機構を更に改良して加えて、現在の市販車に採用されている対策を見てみましょう。


 
 
この図は、同社が現行販売車種(Rシリーズ )で採用している機構です。
この機構の特徴は、前出の車両でほどこされた対策はそのままに、Kシリーズで採用されていたリアギアユニットケースを、トルクチューブ(右側スイングアーム)に固定するのではなく、リンク機構を介して車軸を中心にある程度の回転を許容する、フローティング機構を採用している点です。とは言え、Kシリーズの時よりもユニットケースの可動範囲角度を広げ、フローティング化の為に追加されたロッド(トルクロッド)が作り出すリンク比にも大きな違いが見て取れ、一層の最適化が進められていると思われます。

では、何故? フローティング化させるとトルクリアクションの低減に繋がるかと言えば、リアホイールの上下動に伴って、リンクの効果でリアホイールが僅かに回転して、その回転によってサスペンションを伸ばす(結果、リアが浮くという現象に)きっかけとなる、駆動力によってタイヤ接地面に発生する、駆動方向とは逆向き回転方向の“反力”の発生を抑える効果があるからです。
この効果は、ページ2 のチェーンドライブ車の項で解説した リアブレーキキャリパーのフローティング化の効果と基本的には同じ原理です。しかし、このフローティング化は、リアブレーキの場合と同じく、根本的な解決策ではなくて対応策に過ぎないとも言えます。

「トルクリアクション」は、継手を介する構造の為に、駆動トルクなどの変動によって継手部角度が不安定になる事が最大の要因で、不安定な状態の時にリアタイヤ{駆動輪}の接地面からの“反力”によって、スイングアームを介してリアサスペンションを伸ばす方向へと働いた時に「リアが浮く」と感知されるのです。そして、ページ4 で簡単に追加・解説するのですが、「リアが浮く」という挙動がオートバイの安定性・安全性を損なっている事を見逃してはいけません。 また、リアタイヤの接地面からの“反力”はチェーンドライブ車でも同様に発生しているのですから、シャフトドライブ車の「リアが浮く」挙動の原因を 接地面からの“反力”だと言うのも正しくはありません。



という具合に、メーカーが作成した広報用の画像を利用して解説すると、このトルクリアクションを低減させる対策が大変にユニークで優れているかのような印象を持った人も多いかも知れません。しかし、実際には、四輪車などでずっと以前からトルクリアクション対策とし採用実績のある機構です。
では、四輪用で実用化されている一例を紹介します。


 
 
四輪車 の画像の中の緑色の枠の中に、ダブルトレーリングアーム と呼ばれる、前後方向に配置された2本のロッド(トルクロッド)が見えると思いますが、それが後輪が取り付けられたアクスルユニットを支えて、駆動力や路面抵抗などによって発生する トルクリアクションの対策としています。
 
 
 *  *  *  *  *  * 

今回は、説明に用いるのに適当な画像が無くて1950年代の フェラーリ F1車両の画像で紹介しましたが、実は 一般の乗用車でも トルクリアクション の発生は珍しい事ではなく、時には故障を誘発させていた頃があった事を紹介しましょう。
それは、乗用車と言えば FR車ばかりだった頃、つまり 前方にエンジンがあって、後輪を 駆動する為に床下に長くて太い「ドライブシャフト」(四輪車では プロペラシャフトとも呼びます)があった車両が殆どで、そういう車両で急に大きな駆動力をかけた時や路面状況などによっては ドライブシャフトが上下に揺れるワインドアップ症状が発生して、時には床下にドライブシャフトが当たったり、エンジンとトランスミッションが大きく揺れる事は決して珍しい事ではありませんでした。特に、リーフスプリングを用いたサスペンションを採用している車両では目立っていたように思います。

ただ、四輪車での駆動系やサスペンション系の改良は二輪車以上に進んでいて、FR車の場合はセンターベアリングでドライブシャフトを支え、リアのリングギアユニット(デファレンシャルギアユニット)を車体側に固定した完全独立懸架が一般的になり、FF車も含めて、トルクリアクションを感じたり操縦性に悪影響を受ける事は殆ど無くなっています。
そういう意味では、二輪車の駆動系とサスペンション系の設計は、ある意味で進歩していないと言えるのは間違いないと考えています。
 
 *  *  *  *  *  * 


以上、「 リアが浮くような挙動は無くなりましたが、何故でしょう 」という質問への回答にはなっているでしょうか。

さらに、追加になりますが、トルクリアクションとシャフトドライブ車との関係について、色々と調べて考察を進めてみると、メーカーは決して公表しない要素が見えてきましたので、次の項、エンジンの「出力軸の配置による影響」の解析を一緒に考えてみてください。
 
 

  This "torque reaction" is not unique to motorcycles, but has long been causing problems such as drive shaft windup in cars.As a countermeasure, various solutions have been developed, and BMW vehicles, which are popular shaft drive motorcycles, have been adopted as countermeasures. For example, the drive shaft increases the rigidity of the swing arm through it to form a "torque tube", increases the length of the "torque tube" to reduce the angle change of the joint, and tilts the engine output shaft to match the drive shaft.

Furthermore, a "torque rod" is mounted parallel to the swing arm "torque tube" to make the gear unit case at the center of the driving wheel float.  In particular, this measure is effective in preventing the occurrence of reaction forces, which are generated by driving force on the tire contact surface, which lift the entire swing arm centered on the rear wheel axle.  Also, the "reaction force" is the reason for the inherent adverse effect of increasing the height of the rear by taking advantage of the unstable situation created in the joint part of the drive shaft, so I think it has a suitable effect.

However, these measures are not fundamental solutions, and the impact of the engine's output axis alignment method is significant, which is explained in the next section.
 





3. エンジンの出力軸の配置形式による影響

Effects of Output Axis Placement Format

  
  ちなみに、エンジンの配列というのは「並列」と「直列」になります
  この「並列」、「直列」とは、エンジンのクランクシャフトと出力軸の配置形式
  の事で、クランクシャフトと出力軸が並列になっているエンジン形式が「並列」、
  直列になっているのが「直列」で、国産の多くの四気筒エンジン車は並列です
  シリンダーがV型に配置された四気筒エンジン車が販売される様になってから
  シリンダーが一直線状に配置されたエンジンを直列と誤って書く記者もいます
  が、エンジンの基本はクランクシャフトと考える本来の表記で解説します


■ 直列配置の場合 ■ In case of series arrangement

初めに、「直列」配置の代表格、シャフトドライブ車を長年販売している BMW車・水平対向2気筒エンジン車のエンジン・駆動系の透視図を見てみましょう。 右上から左下に向けて、黒く塗られたクランクシャフトからドライブシャフトまで直線状に繋がっていて、これが「直列」配置となります。この「直列」配置の場合は、駆動輪を完全に固定させた状態でドライブシャフトに駆動力をかけると、先にも説明した通り、エンジン全体をドライブシャフトを軸にして回転させる力が働きます。



 
 
それとは別に、注目して欲しい事は、ドライブシャフトに繋がっている出力軸が、クランクシャフトや駆動軸(フライホイール/各種補記類用駆動ギアも)がほぼ直線状(直列状)に連なっている点です。
この様に、エンジン/駆動系を構成する部品の中で最も質量が大きいクランクシャフト(黒い部品)が直列状に出力軸へ連なっている事によって、ドライブシャフトの出力軸側には回転・慣性力(慣性モーメント)が作用やすく、「継手」部の前後でのトルク差や変動が生まれやすく、結果として「直列」配置車の場合には「トルクリアクション」が発生しやすいと言える、と考えています。
 
 
  
・・ 以下、「直列」配置車の中で、エンジンのクランクシャフトの質量が大きくて(重くて)
   回転モーメントも大きく、「トルクリアクション」が生まれやすいと思われる車両の画像
   を掲載します。車両名が判るでしょうか?














■ 並列配置の場合 ■  In case of parallel arrangemant

次に、「並列」配置のシャフトドライブ車の場合を考えてみましょう。

 




「並列」配置のエンジンでシャフトドライブを採用しているオートバイは少なくありませんが、上の車両画像だけを見ても、「直列」配置と「並列」配置との違いが掴めない人も多いでしょう。
そこで、ドライブシャフトを駆動する仕組みを簡単に理解できる様に、「並列」配置でドライブシャフトを駆動する形式を採用している自転車の画像を紹介します。きっと、「直列」配置との違いが分かるはずです。
 
 

  
  
ペダルは、普通の自転車で見慣れたペダルですが、その内側にある円盤状のケースの中にリングギアがあり、その後輪側にはべベルギア(傘歯車/または同様なギア)があって、そこからドライブシャフトを駆動する機構になっています。そして、ここで注目して欲しい点は、ペダル・クランクの中心軸が出力軸だという事です。「直列」配置の場合の出力軸はドライブシャフトと同じ方向を向いているのですが、「並列」配置の場合には出力軸がドライブシャフトとは 90度 の角度を成している事が特徴です。

では、この自転車に乗った場面を想像してみましょう。仮に、駆動輪(リアホイール)を固定したまま、ペダルを踏んで駆動力を与えたとすれば、ベベルギアとリングギアとの接触部を中心にして、車体前方を下方向へと押し下げる力が働く事が理解できるでしょう。

つまり、駆動力をドライブシャフトにかけた時、エンジンや車体を左右方向へ回転させる力が働く「直列」配置の車両と、車体前方を下方向へ押し下げる力が働く「並列」配置の車両とでは駆動力による車体挙動が違う事は明らかです。ですから、この事からも「シャフトドライブ車はリアが浮く」と言う表現は正しいとは言えません。
 
 
 
・・ 以下、「並列」配置のエンジン形式でシャフトドライブを採用している市販車の画像を
   掲載しますが、車両名は判りますか ?
 
 











二輪 ジャーナリストや物知りな解説者の中には、「トルクリアクション」によって「リアが浮き上がる」という現象は リアタイヤへの荷重が増す事になり、結果的にリアタイヤのグリップ力が高まる、という解析をする人もいるでしょうが、私はそうは思いません。逆に、「リアが浮き上がる」という現象はリアサスペンションの適切な作動を妨げるため、リアタイヤのグリップ力を減少させる原因となりますので、オートバイのライディングにとって適切な考えとは言えません。

シャフトドライブ車であっても、チェーンドライブ車であっても、駆動力を与えた時にリアの車高を上げる力(サスペンションを伸ばす向きの力)が大き過ぎる設定やセッティングが施された車両の弊害の解説と、リアタイアのグリップ力を守る最適なスイングアームの垂れ角の考え方についての解説を、次のページ4で簡単に紹介します。

オートバイの事をもっと深く正しく知りたい人、安全なオートバイライフを過ごしたい人、そして楽しくオートバイに乗りたい人は、リアタイヤのグリップ力を確保する為の調整・セッティングを、簡単で分かりやすい解説をしますので、どうぞ、ページ4をご覧ください。

  The above explained that the "rear uplift" behavior, which is said to be unique to shaft drive vehicles, is far from correct.

In the next chapter, page 4, I
will explain the importance of adjusting the hanging angle of the rear swing arm regardless of the mechanism differences between chain and shaft drive vehicles. The behavior of the swing arm when the driving force is applied will affect the grip force of the tire, which is very important, so please read on.
 

 
 


解説記事と画像 :小林 裕之
  
Texts and images : Hiroyuki Kobayashi





わからない用語は、ページ下段の【用語の解説辞典】で確認できます
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