誰でも好奇心はある。
特に、非日常的な出来事に対しては異常な程に興味が湧くものだ。
ただ、非日常的な場面に面した時にこそ“人間性”が見えてくる。
野次馬達は遠巻きに眺め、パトカーが到着しても解決が進まない様子を見て、苛立ちまぎれに思っていた事を口に出したのだろう。
少なくとも10分以上見物していて、トラブルに陥っている様子を確認していたのなら、僕の代わりに血を流し意識の無い人を運んでくれた方がよい筈だった。
でも、当時の僕は若く、そんな事を考える余裕は一切無かった。
「 トランクを壊すより、もっと良い方法があるはず 」
そう考え抜いて、リアウィンドウの下、リアシートの後のリアシャルフボードを室内側から壊して、そこからトランクの中へ手を伸ばしてキーを取り戻した。
病院までの道をパトカー先導で走り抜き、負傷した人と同じ血液型だったので献血を申し出た彼女を自宅まで送り届け、僕も自宅に帰り、長い午後の一日は終わった。
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