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 Common sense and insane

トレール量は操縦安定性で一番重要な要素です。そして、ライディングによって変化するトレール量のコントロールこそ、オートバイの楽しみであり、私達が車両を評価する際の基準になっている程ですが、その重要さは正しく認識されていません。

The amount of trail is the most significant factor in handling stability. Controlling the amount of trail, which varies depending on the rider's riding style, is the fun and evaluation criterion for motorcycles, but the importance of this criterion is not properly recognized.



  Trail Controlled Riding




5. 「キャスター」を題材に基本の解説  Analysis based on Casters


キャスター と聞くと、オートバイ好きな人なら、思わず「キャスター角」の事を連想してしまうかも知れませんが、実際には、オートバイとは全く関係の無い、重量物などの移動を助ける為の、車輪付きの小さな“部品”の事で、その種類は、車輪の向きが変わらない「固定型」と車輪の向きが自在に変わる「自在旋回型」の 2種類があります。

ここでは、台車などの前輪によく採用されている「自在旋回型」キャスターを例に挙げ、その車輪が「トレール量」によってどのような影響を受けるか、解析を進めていきます。このキャスターには、オートバイの前輪と似ている点もあれば、全く異なる点もありますが、「トレール量」が車輪に与える原理は同じです。先ずは、直立状態を保つ車輪で、ステアリング回転軸角が 90度の条件に限定して、基本原理を解説します。


キャスターの主な2種類の外観と名称


キャスターの種類と台車での利用例

We will analyze the basics of alignment using a swivel-type caster equipped with a rotation axis as a subject.






6. キャスターとトレール量  Casters and Trail Amounts


ここで、二つの「自在旋回型キャスター」を例に挙げて、「トレール量」の違いはどこから生まれるのか確認してください。
A のキャスターは、ステアリング回転軸が路面と交わる点と、車輪が路面に接地している中心点が同じになっているタイプです。今は、あまり見掛けなくなったタイプですが、20年ほど前までは、台車の前輪にも数多く採用されていた程に、一般的な自在旋回型キャスターです。
B のキャスターは、ステアリング回転軸が路面に交わる点と、車輪の接地中心点とが離れているタイプで、この離れている距離が「トレール量」になります。今でこそ、キャスターと聞けばこのタイプを思い浮かべる程ですが、何故、このタイプが普及したのか、その理由の一端は「トレール量」にあるでしょう。


キャスターのステアリング回転軸とトレール量の関係

There are two types of swivel type casters, A and B, as shown in the figure. A is the type where the intersection of the steering axis and the road surface overlaps the wheel contact point and the amount of trail is zero, and B is the type with a trail amount. Most of the commonly used swivel type casters are of type B, which seems to be deeply related to the fact that they are equipped with the amount of trail.



■ 用語と解説 Terms and Explanations

ステアリング回転軸
Steering Axis

ステアリングとは、車輪の向きを変える為の機構の事で、一定の “軸” を中心にして向きを変える仕組みの場合は、この “軸” をステアリング回転軸と呼びます
多くのオートバイや車に存在していますが、自在旋回型キャスターと同様に、眼には見えませんが、常に力学上の回転中心として考える事が大切です

When analyzing the behavior of the front wheel of a motorcycle, it is important to consider the position of the intersection of this axis and the road surface.

接地点中心
Ground Point

接地点中心とは、車輪やタイヤなどが接地している面の中心(力学的な中心点)の事で、バンクさせたタイヤに働く力を解析する際、この「接地点中心」を想定する事がとても大切になります

It is an essential element when considering the interaction between the front wheel and the road surface.






7. トレール量と復元力  Trail Amount and Resilience Force


では、前項で紹介した自在旋回型キャスターの内、B の「トレール量」が設定されたタイプで解析しましょう。 台車が前進している時の状態を考えます。台車は人が押す力で動くので、台車に固定されたキャスターも一緒に前進する事になります。が、もう少し詳しく考えると、「ステアリング回転軸」が前進するのに合わせて、車輪は引っ張られるように回転しながら進む事が分かります。つまり、車輪の動きは「ステアリング回転軸」によってリードされ、直進状態では、進行方向上にステアリング回転軸(回転中心)と接地点中心が一直線上に並ぶ事になります。


キャスターのステアリング回転軸と車輪の関係


次に、
路面の凸凹など、何らかの外乱で車輪の向きが変わってしまった場合を考えてみましょう。 この時、「ステアリング回転軸」にリードされた車輪は回転軸(回転中心)を中心にして向きが変わる事になり、車輪の接地点中心は進行方向上の直線から外れる事になります。 直進時の一直線上から外れた事によって、「接地点中心」には進行方向とは逆の向きの力(進行による路面から受ける抵抗力)が働きます。そして、その抵抗力によって、接地点中心を一直線上へと戻そうとする力「復元に働く分力」が生まれます。

ただ、ここで大切な事は、この「復元に働く分力」だけでは車輪の向きを直線上に戻す力はにはならない事です。「回転中心」から車輪の「接地点中心」の間に一定の距離がある事が必要なのです。つまり、「トレール量」がある事が必要で、この「トレール量の」大きさによって、車輪が一直線上に戻ろうとする力(モーメント)の大きさが決まるのです。



キャスターのトレール量と復元力との関係


When analyzing the case where a wheel is displaced from the straight ahead direction, the displacement of the ground point generates a component force in the direction that restores the wheel. The magnitude of the force (moment) that returns the wheel to the straight direction is the product of the amount of trail and the component force.


■ 用語と解説 Terms and Explanations

回転中心
Rotation Cente

「ステアリング回転軸」が路面と交わる点で、オートバイでも常に「回転中心」が存在していて、コーナリングでバンクさせた場合でも、常に車体の中心線上の路面の上に存在し続ける事を理解する事が、旋回時のタイヤに働く力を理解する際に重要になります

It is the intersection of the steering axis and the road surface. It is also present on the front wheels of motorcycles and always stays on the centerline of the body, even when leaning and turning.

復元力(モーメント)
Resilience Force

「接地点中心」が進行方向の直線上から外れた際、「トレール量」を持つ車輪に働く力で、オートバイの場合も同様な力が作用し、コーナリングでバンクさせた際、前輪タイヤの「旋回モーメント」を増加させる働きをします

It is greatly related to the "turning moment" generated by the tires when the motorcycle is turning.






8. トレール量と方向安定性  Trail Amount and Directional Stability


3つの 「トレール量」が異なる自在旋回型キャスター、A、B、C それぞれの「復元力(モーメント)」を解析して、車輪の「方向安定性」を比較してみましょう。

A. の「トレール量」が 0 のタイプでは、「復元力(モーメント)」が働かないので、車輪が左右に回転して、非常に不安定な動きになる事が分かります。
B. と C. では、「トレール量」があるので、「復元力(モーメント)」が働いて、車輪が一直線上に戻る事が分かります。そして、C. のタイプの方がトレール量が大きいので、復元力(モーメント)も大きく、車輪の向きも進行方向の一直線上から変わり難い事が分かります。
 

キャスター、トレール量と方向安定性との関係


When the amount of trail is 0, the wheel has no directional stability and exhibits unstable behavior. When the amount of trail is present, the wheel will recover in the straight-ahead direction, and the larger the amount of trail, the greater the resilience force and the higher the directional stability.


■ 用語と解説 Terms and Explanations

方向安定性
Directional Stability

よく使われる用語「直進安定性」と似ていますが、「直進安定性」が車体が向いている方向への安定性を指すのとは異なり、車輪やタイヤが向いている方向への安定性を指し示す為の用語です
コーナリング中のオートバイのタイヤの挙動を考える際、特に、前輪タイヤに働く様々な力のバランスを考える際に大切になる要素です

This term refers to the stability of the wheel or tire in the direction it is facing. Unlike straight-line stability, which indicates stability in the direction the vehicle is facing, the analysis of the tire's own stability is essential to understanding motorcycles.






解説記事と画像 :小林 裕之
  
Texts and images : Hiroyuki Kobayashi


● 次ページで『 オートバイ前輪のトレール量 』を解説します


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