オートバイに“魂”を注入するのがテストライダーの役割だが、その独特な“匠” (たくみ)とも
言える能力は、決して一朝一夕で身につくものではない。その上、彼らにも定年があるので、いつまでも開発現場で“魂”の注入は続けられない。
購入するライダーの眼が以前より肥えてないのか、メーカーの営業部門のマーケッティング戦略意向が強過ぎるのか、コスト削減圧力が厳しいのか、以前ほどに細やかな“魂”の注入作業をされていない車両が目立つようになっている。
そんな中、設計年次が古い VTR は、簡素な設計ながら、絶妙な車体剛性バランスに優れた、“ 魂 ” の籠った車両だ。 それも、一度目のマイナーチェンジを行なった車両が、一番バランスの良さを発揮している。
残念ながら、マイナーチェンジ2回目以降の車体は、当初備えていた 「ライディングの楽しさ」 や 「スポーツ性」 を犠牲にして、とっつきやすく購入しやすいツーリング車になっている。 ・・ という背景があるので、 僕は俗に 2型と言われる車両に惚れている。
だから、当初の “魂” が籠ったその車両を中古で購入して、塗色など細部は変更したものの、車体の基本的な仕様はそのままで、主に練習用として活用している。
実際に、ノーマルのままでも懐がとても深い車両で、乗れば乗る程に様々な感覚やライディングスキルを、優しく教えてくれる大切な“ お師匠様 ” だ。
だから、彼にも長年その車両を勧め続け、ようやく買ってくれたのだが ・ ・ ?
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