このエントリーをはてなブックマークに追加


YOKAI's murmur
 

「近接排気音規制」の廃止
知っていますか?

   
Changes in Exhaust Noise
Regulations, do you know?





はじめに  Introduction



オートバイに限った話ではありませんが、“騒音” が社会的な問題として採り上げられて、次々と法律が作られて規制が厳しくなった事は多くの人が知っているでしょう。 そんな規制の方法の中で、『近接排気騒音規制』や『定常走行騒音規制』、そして『加速騒音規制』が加わった事を知っている人も少なくないでしょう。 この騒音規制が導入された平成10年(1998年)当時、オートバイ各誌で大きく特集記事が掲載され、マフラー(消音機)を交換したライダーだけでなく、交換していないライダーも、取締りに遭う事に変に恐れを感じたものです。
しかし、平成28年(2016年)、『近接排気騒音規制』や『定常走行騒音規制』は廃止されている事を知るライダーは決して多くないでしょう。




騒音計





近接排気騒音規制とは
Proximity Exhaust Noise Regulations


騒音対策として、最初に作られた法律で、排気口から水平に45度後方の角度で、一定の距離に置いた騒音計で測定した音圧(dB)で規制するものです。
ただ、原動機付き自転車と二輪車(法律的には二輪自動車)の製造(認証または輸入)年月日別別に細かく規制された複雑な法律です。

近接排気騒音法 基準値


しかも、「近接排気騒音」の測定は、誰もがどこでも行なえる簡単なものではない事は知られていない為に、多くのライダーにとって、余計に不安にさせる要素になっていました。
 
先ず、法律で測定場所の条件が定められているほか、測定機(騒音計)は計量法の対象となる特定計量器として「検定」を受け、定期的な検査で「校正」が行なわれる事が求められているので、Amazon で買った測定機や アプリ で測定して、簡単に“騒音” の証明をする事は出来ないのです。
 
更に、騒音を証明するには「環境計量士」という国家資格を持った人が測定する必要があり、1年間の資格勉強で資格取得さえしていない警官が、ライダーを道端で止めて、測定して、その場で違反キップが切るという構図は普通は有り得ないのです。 しかも、正確な測定の為にはエンジン回転計も必要で、原動機付き自転車を始めとして、タコメーターが無い車両の場合には更に簡単な事ではない事は知られていません。



近接排気騒音 測定風景







国際的な整合性のために
Aiming for National Consistency


ここで、話は急に飛びますが、平成28年(2016年)10月1日以降に製造された車両(自動車や二輪車など)に対しては、『近接排気騒音規制』と『定常走行騒音規制』が廃止されている事を伝えます。

既にご存知の人も居ると思いますが、自動車などの安全や環境に関する基準(法律)が各国で異なっている状況を改めて、国際的な整合性を高める気運が高まり。国際連合主導で『車輛などの型式認定相互協定』を設けています。 日本も平成10年(1998年)に加入して、その協定に基づいた『 協定規則 』を段階的に採用を進め、“騒音” に関する規定として『 協定規則51号 』を現在は新しく採用されているのです。 そして、この採用に伴って、従来からの『近接排気騒音規定』と『定常走行騒音規制』は廃止となっているのです。






協定規則 51号  Agreement Rule No. 51


とは言っても、近接排気騒音規制に慣れた人は俄かには信じられないでしょうから、国土交通省か公表している資料で、『 協定規則 51号 』に関する告示を紹介します。


道路運送車両法、保安基準、協定規則51号
 

この法律が適用される時期は、輸入車を除く新型車の場合、平成28年(2016年)10月1日以降に認証された車輛からで、それ以前から生産され続けている車両の場合は、平成33年(2021年)9月1日以降になります。
だから、該当する車両を所有している場合、『 近接排気騒音規制 』などの取締りを受ける対象にはなりませんし、消音器を改造したり、JMCAなど認証を受けた品以外に交換する事は禁止されているだけです。

因みに、平成28年以前に生産され『 協定規則51号 』に該当しない車両を所有している場合は、従来の通り、『 近接排気騒音規制 』などの規制対象のままです。 が、実際には、多様な規制と多種の車両が混在している現状では、例えば、警察官による路上“騒音” 測定取締りなどは難しく、ノーマルあるいは JMCA認証を受けた消音器であるかをチェックされるに留まるでしょう。

複雑な騒音規制の為、例えノーマル車両だったとしても、社会的に抑圧を受けた様な印象を受け、時には法律を知らない警察官や検査官から暴言を受けた経験のある人も必ず居る筈です。
どうぞ、法律を正しく知って、堂々とオートバイを楽しんでいきましょう。







【 関連する記事、資料 / Related and Reference Articles








クリエイティブ・コモンズ・ライセンス ページ中の画像は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています
文章等は許可無く転載することを禁じます / Copyright GRA All Rights Reserved.