このエントリーをはてなブックマークに追加


YOKAI's murmur 



トラ君の
フロント スプリング の交換 (1)

 Replacing the front springs
of Triumph Part 1


     最近、ガレージには良く来ていたけど、自分のオートバイを触るのは久し振り
     以前から、予定していたフロントスプリングの交換作業を始めます


『 トライアンフの、持病で欠点 』  To improve the suspension that is
                     drawbacks of my Triumph


トライアンフ ( 2006年式 ストリートトリプル)のサスペンションは良い設計ではない。
と言うと、キメ細かなダンピング調整が可能な機構とか、高価な材質を使った造りとか思う人も居ると思うが、それは違う。サスペンションとフレームの設計が悪いのだ、それで サスペンションが本来の良い仕事をするのが難しい設計になっているのだ。

トラ君の フロントスプリングの交換(1) 1

欠点を列挙すれば、リアサスペンションはリンク式を採用しているのにプログレッシブなレート変化せず、フリクションも高いのか動き始めがとても鈍く、低い荷重域でグリップを失い易く、場合によってはリアから一気にスリップダウンしてしまう。フロントサスペンションは更にシリアスで、サスペンションを支えている フレームのステム部の剛性設計が悪いのか、ステム部が 周波数約 240 Hz で上下方向に楕円を描く様に揺れるので、舗装路面上で大き目の段差乗り越え時にタイヤとスプリングの振動数が 240 Hz付近になってしまうと ステムまで共振してしまい、瞬間、コントロールが出来ない時間帯が生まれてしまう。その上、不足気味のトレール量でフロントタイヤの方向安定性も欠けているから、公道上で安心して走れない時がある程に、トライアンフのフレーム・サスペンション設計者は良い仕事をしているとはとても言えない。
そんな設計のお蔭で、トライアンフを購入して以来、この問題の解決に随分と悩まされつつ、知識を深め、色々な思考錯誤の改良を施しつつ楽しんできた。正に、後ろの百鬼・どろろの心境だ。

そんな事情から、フロント スプリングも15セット以上のスプリングを試してきたけど、車体の他の箇所の改良効果もあって、より適したフロントスプリングの特性も絞れてきたので、今回の フロントスプリング の交換(変更・セッティング)にはとても期待できる様になった。
きっと、同型車(初期型 ストリートトリプ、デイトナ 675 )に乗っている人の中にも怖い思いをした人は居ると思うし、他の車両でも車体の安定性や操縦性に悩んでいる人も居ると思うので、今回はフロントスプリングの交換の話だけど、参考になる事は必ず一つはあると思うので、ぜひ、ご覧ください。





『 フロントスプリング交換と心配事 』 Replacing the Front Springs

フロントスプリングは数多くのタイプを使用してきたけど、今は比較的まともな操縦性が得られた WP製 の ZZ-R 1100用 ツインレート仕様を使っている。 しかし、スプリングのレートが少し高過ぎて、ちょっと頑固な性格をしているので、最近は少し嫌気が差してきたというのが交換の理由だ。

交換予定のスプリングは、coerce製 の ZZ-R 1100用、同じくツインレート仕様で、初期のスプリングレートは WP製が 0:84 kid/mm で coerce製 が 0:78 kgf/mm と 7% ほど低くなり、レートが変換されるストローク位置も 約 8 mm 手前になるので、どうだろうと期待はしている。


スプリング仕様比較一覧


しかし、スプリング長 は WP製より 6mm 長くなり、組み付けたままオイルレベルを変更する為の調整孔 がより短いスペーサーで実現できるか不安はある。 組み付けたまま、分解しないで、オイルレベルが変更出来ないと 後から必ず行なう セッティングの微調整に大きな支障になるので、絶対に避けたい事なのだ。


トラ君の フロントスプリングの交換(1) 2
  The removed front forks and the replacement springs on the table
 
 
フロントフォークから顔を出した WP製 スプリング と 白い樹脂製スペーサー。 そして 台上に横になって下を覗いているのが Coerce製 のスプリング。こちらは WP製より 6o 長い。






『 フロントフォークの分解 』 Disassembly of the front forks

ストリートトリプルに装着していた Daytona 用フロントフォークを分解したところ。
ここまでは特に問題無し。が、やはり、危惧していた通り、新たにスペーサー(カラー)削り出す必要がありそうだ。

トラ君の フロントスプリングの交換(1) 3


スペーサー用に流用するベース部品は、フォークメーカーが KYB社なので、KYB 製ユニットを採用している カワサキ純正部品だ。ベース部品の全長は 100 mm で、これを 45 mm 程にカットして、組み付けたままオイルレベル調整用の 孔 を開けて、その後で スラストベアリングと干渉するフランジ部分を削り落とすだけ。 旋盤で 10分程度の作業で、 夜だけど大丈夫だろう。隣人の方の迷惑にならない内に旋盤作業は終わらせなくては。






『 スペーサーの切削&加工 』  Production of Spacer

スペーサー削り出しと穴あけ加工、完了です。
これで、スプリング変更は問題なく出来る。 が、実際に車両に組み付けたままでオイルレベル調整が出来るかは不明。仮組みした段階で、実現可能か、不可能かは判るだろう。

トラ君の フロントスプリングの交換(1) 4
 Spacers manufactured in accordance with spring changes, and processing for oil level change
 even after installation



不可能だと判明した時にはどうしよう ?
今のスプリング君には嫌気が差しての交換だから、出来ないからと言って「 また、よろしくね!」 なんて言って元に(ヨリを)戻すなんて、格好悪くて出来ないし ・・・・






『 必要なオイルレベルの設定変更 』  Oil levels need to be changed when
                       changing springs


スプリング交換の時、肝心な要素は オイルレベルの設定だ。
オイルレベルは、サスペンションのストローク量を決めてしまい、エアスプリングの働きの入り方を変えてしまう。 そして、セッティングの基本は、一度に複数の設定要素を変更しない事だ。設定要素一つずつ変更するから正しい調整ができるのだ。

トラ君の フロントスプリングの交換(1) 5
  奥の2本が 交換前に使用の WP製、手前の2本が交換用の Coerce製、巻きの向きは各社それぞれです
  Two in the back are made of WP used before replacement, and two in the front are made of
  Coerce for replacement. Winding direction is different for each company



今回はスプリングレート変更による変化だけを確認するのだから、スプリング変更でストローク量が変わらない様にしなくてはならない。ストローク量はフロントフォーク内のエアボリューム(空気の容積)で決まり、エアボリュームはフロントフォーク内部の容積からスプリングの体積とオイル体積を引いた量になる。そして、スプリング変更でスプリングやスペーサーの体積は必ず変わるので、その増減する体積に応じてオイルの量を変更すればよい。変更すべきオイル量が求まれば、フォーク内部のオイル液面の表面積で変更オイル量を割れば、変更すべきオイルレベルの量御が求まるので難しくない。スプリングの体積変化を考慮せずオイル量も変更しなかったら、ストローク量が変わってしまって、何のためのスプリング変更か分からなくなってしまうので要注意だ。

そして、スプリングの体積を求めるのは難しくない。 スプリング単体の重さを計測して、スプリング鋼の比重で割れば簡単に求められる。そうして求めた結果は、WP製のスプリングは、線径が 5mm と太めで、重さが 393g。そして Coerce 製は 線径が 4.9 o と若干細くて、重さが 371 g と 22g 程軽い。 バネ鋼 の比重を 7、2 とすれば、スプリングだけで 体積は 約 3 cc 少なくなるので、スペーサーの体積減少分と合わせて、オイルレベルは WP製 の最終設定レベル よりも 2mm 小さくすればよい。


トラ君の フロントスプリングの交換(1) 6
   Calculate the volume from the weight of the spring and set the oil level
 
 
多くの人は、たった 2mm と言うだろうが、精緻にバランスを取るセッティングをする立場からみれば全然小さくない値だ。 しかし、ここまで計算して組み立てても、本当に大切なのは組み上げた後だ。乗車時 (1G’時) 車高と 残ストローク量を スプリング交換前のデータと同じに調整をする事だ。 スプリング変更前とスプリング変更後の二つのフロント車高の値を同じに調整しなければ、スプリングレートの変更以前にもっと大切な基本設定が変わってしまって、スプリングレート変更の効果が見えなくなるのだ。

乗車時車高はフォークの固定位置の調整で行なうけど、残ストローク車高の調整はオイルレベルの調整で行なうしない。だから、組み上げたままでオイルレベル調整が可能な構造、システムが必要になるのです。 さあ、最初の話に戻って、新作のスペーサーを組み込んで、オイルレベル調整に必要なスペースが残っています様に! お願いだ。



< What is on this page >
The biggest drawback of my Triumph is the frame and suspension, which always shows unstable behavior in marginal driving, so I made a change to the front spring for the 15th time in total.
Even if the spring is changed, the bad design that the stem part of the frame vibrates at about 240Hz remains, but there is a feeling that it approaches the spring of the characteristic which covers the disadvantage, and it is expected for a new spring.


< 解説文章と画像 :小林 裕之
< texts and images : Hiroyuki Kobayashi >



【 妖怪ガレージ 日誌】より
http://gra-npo.org/policy/yokai_column/list_youkai_column.html#setting




 * * * *  次ページに、組み付け作業と試乗結果を掲載しています  * * * *
The next page shows "the assembly work and test ride results".


わからない用語は、ページ下段の【用語の解説辞典】で確認できます
「質問」を送信される方には説明を返信しますので、利用してください



『コラム一覧』ページへ移動します
次のページへ移動します




 <Q&A>スプリング の レート について
        FAQ,  About Setting the Spring Rate
    ご自身のオートバイの操縦性や安定性を良くするために、
    スプリングに注目している方からの「どこまでレートを下げて
    もいいのか悩んでいます」質問と回答です







クリエイティブ・コモンズ・ライセンス ページ中の画像は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています
文章等は許可無く転載することを禁じます / Copyright GRA All Rights Reserved.