九州地方を始めとして全国各地に豪雨をもたらしている大梅雨が続く中、当日は
雨一滴も降らない空の下、オートバイとライダーのための “クリニック” を開催
し、良き人達との充実した時を過ごすと共に、「クリニックからの告発」(仮称)
のテーマでライダーとオートバイ業界全体への啓発活動を決意する日となりました
『 悩みや困り事、みんなまとめて 』
クリニックを受診する人の悩みや困り事、要請に応えるのが当“クリニック”の役割です。
一人ひとりの方からは事前の予約の際にはお聞きしていますが、実際に顔を合わせてお聞きする事を大切にしています。「どんな経緯で今に至っているのか?」「どんな事でどんな風に悩んでいるのか?」と直接に説明してもらうのですが、同時に、その方の了承を得た上で、他の受診者の方々にも聞いてもらって、全員で悩みや困り事を共有できる様にしています。
この悩みや困り事についての細かい問診と、他の方と共有してお互いが一緒に解決をしていこう!という意識が生まれたらクリニックは上手く進められます。実際、今回もそうでした。
それから、「個人毎に個別の悩みに対処を別々に進めていく事は可能ですが、一緒に同じメニューをこなしがら進めていく対応でどうでしょうか?」と尋ね、全員で一緒になって取り組む事で始まりました。
『 簡単な練習が、多くの事を教えてくれる 』
今回、初めて受診された二人の方の悩み&困り事は、「直進時に片方へ偏向し真っ直ぐに走らない」や「片方の旋回が上手くできない」などでしたが、二台の車両共に外観からは上々のコンディションで事故歴はおろかちょっとした改造や荒っぽい使われた痕跡は無く、車両アライメントなどのチェックは後で行なう事にして、先ずは簡単な練習を行なってもらい、その際の車両の挙動から悩みや困り事の程度を探る事にしました。
その練習パターンは、幅 30〜15 p、長さ 12mの狭路走行と、直径 6 & 9 m の円周に沿って周回をするだけのとても簡単なものです。ただし、ブレーキは一切使わず、一定速度で安定して走り続ける事だけ守ってもらいました。
この練習がとても多くの事をライダーに教えてくれる事は、オートバイに乗った事の無い人には全く理解できないでしょうし、このブレーキを使わずに安定して走るという練習をした事のないライダーにも、きっと理解できないでしょう。しかし、オートバイがライダーに対して、「そうなの?」「あっ 上手くいったね」とはっきりと教えてくれるのです。
どうか、今は悩みや困り事を感じていない人でも、機会があれば試して欲しい。その効果は間違いありません。
『 一人の悩みは全員の悩み、全員の悩みは業界の課題 』
お昼の休憩時間に、それは始まりました。
「質問したい事、診て欲しい事があれば、いつでも歓迎します」と、受診した人全員に約束をしていたのですが、「僕のオートバイの状態を診てください」と要請を受けたのです。歓迎です!
このクリニックの流儀で、オートバイの状態(アライメントなど)を診て診断を下す事はせず、チェックすべき箇所を一つずつ取り上げて、「なぜ、この箇所を診るのか」を初めに説明をして、理解が得られた事を確認してから、チェックする方法を目の前で見てもらい、実際の修正作業はオーナー自身の手で行なってもらって、オーナー自らオートバイの理解と整備・調整をする責任を身につけてもらう様にしています。
オーナーさんの悩みに合わせて、フロントフォークの整列確認と修正作業から、前後タイヤの整列確認方法と修正方法の説明を行ない、「どちら共に正しく調整がなされてなく、どちらも直進やバンク操作挙動時の偏りの原因となります。修正すべき箇所ですが、この調整不良は特別な事例ではなく殆どのオートバイでも起きているアライメント不良で、整備知識の欠損が原因です」と説明しました。
この説明の頃になると、自然に他の方々も一緒になって聞いて作業を手伝ってくれる様になっていたのですが、そこでオートバイ業界が正しい整備知識を持っていない為に、ライダーとオートバイを危険な状況に貶めている“ある症状”に直面させられたのです。それは、“ チェーンの適正な遊び調整がなされていない”という現実です。
後輪を駆動するドライブチェーンは、リアサスペンションの動きによって遊び量が変化するため、どんな場面でも“最低限必要な遊び”が保たれる必要があるのですが、初参加の二人の車両はライダーが跨っただけで遊びが全く無い状態に調整されていたのです。
ありえません! 料金を取りながら、整備士免許を持ちながら、ライダーとオートバイを危険な状態に調整をして、その事に気付いていないなんて !
と、考えながら思い返してみると、新車購入から間も無い車両から、上々コンディションの中古車まで、昨年開設のクリニックに受診した人の殆どの車両が“危険な遊び調整”が施されていたのです。それも オーナーの手ではなく正規販売店やタイヤショップの手によってです。
この事実は、業界全体の課題であり、クリニックとして取り組むべき課題です。
その場の全員で、そんな車両整備の現実や課題と直面しながら、色々と意見や作業を進める充実の時間が 1時間以上続いたのです。貴重で課題解決への勇気を授けてくれたひと時でした。
『 “クリニック”で一番良かった事 』
今回の “クリニック” で一番良かった事は、今回受診された方々の意識の高さです。ただ、走りたい! 練習がしたい!上手になりたいという人ではなく、オートバイ や ライディングに 自信を持てない悩みや課題を抱え、それの解決を目指して事前予約して参加され、そして他の方の悩みであっても共有して解決を図る気概に溢れていたのです。オートバイに対する探究心があり、社会的な意識もある人、それは、GRA として 求めている人々であり、求めている方向だからです。
『 クリニックからの告発 へ 』
同時に、新しい活動テーマ・『 クリニックからの告発 』を決心させられた日となりました。
大半のオートバイはショップで適切でないチェーン調整が施され、大半のライダーは安全が損なわれ、オートバイに乗る楽しみが損なわれている事を確信できた日だからです。
例えば、既に挙げた様に、昨年から “クリニック” を受診された方のオートバイの殆どと本日の2台が、ライダーが跨っただけでチェーンに遊びが全く無いという、リアサスペンションが動作するとタイヤのグリップが失われる大変に危険な状態にあり、このオートバイ業界全体が抱える社会的な課題は解消しなくてはなりません。
チェーンの適正遊び以外に、ライダーに合わせたリアサスペンションの基本的なプリロード調整など、本来ならばオートバイ業界がライダーの安全を守る為に行なうべき事は数多くあり、告発すべき事柄は一つに留まりそうにありません。
大きな課題ですから、息の長い訴え活動が必要になりますが、今、その為の施策を練っている最中です。 どうぞ ご期待と意見や提案をお願いします。
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