ライダーがオートバイに対して行なうべき操作は一つしかありません。それは、“荷重コントロール”です。タイヤの中央部なのか、それとも右側なのか左側なのかを決め、正しい位置でブレーキやアクセルを使ってオートバイ(タイヤ)へ荷重を与える事だけです。
そんな“荷重コントロール”を意識して適切に行なえる様になると気付く事が二つあるでしょう。一つ目は、上体や上腕を使った無駄な操作よりも、殆ど何もしていない様に見える程にシンプルで少ない操作でオートバイは自由自在に走る事。 二つ目は、荷重が正しく与えられたタイヤの表面(トレッド面)にはそれを示す“摩耗痕”が残る事です。

実際に、今回、受診した人のタイヤ表面でそれが残りましたので、その“摩耗痕”を紹介します。
最初は、“サークル練習”直後のリアタイヤの左側トレッドです。左旋回は、受診した方は得意だと自覚される程ですから、トレッドエンド(端)まできちんと接地している様子が残っています。しかし、トレッドエンドには明確な“摩耗痕”は無く、さほど荷重がかかっていない事を示しています。

一方の右旋回ですが、ハンドル(アクセル)位置の関係もあったのでしょう、受診した方にとっては苦手な旋回方向だったのですが、“サークル練習”で特に サークルへの最適な進入開始位置の確認をする練習と、サークル旋回へ入った以降のタイヤへの荷重練習での上達の成果がありました。左旋回でのタイヤ表面とは全く異なり、今回の『クリニック』を受診する以前には見られなかったような適切な“摩耗痕”がはっきりと残っていたのです。

“摩耗痕”が左右で違うのは決して珍しい事ではなく、片側だけでも荷重を活かした走りの結果で残る“摩耗痕”が現れる事は大きなチャンスです。片方で出来た事をもう一方で試して実現させるだけだからです。そして、この“荷重コントロール”の感覚を“摩耗痕”で検証した方は、必ず正しい“荷重コントロール”上達の階段を上っていけるでしょう。
『 最後に 』
よく言われている言葉で、「上手くなりたかったら 8の字練習をしろ」 とか 「8の字を描く走行練習はライディングの基本だ」という言葉があります。が、私はそうは思いません。旋回サークルの大きさを想定せずに、走る度にまちまちな旋回半径で走るだけの練習は、“キー(音程)”を合せず意識もせずに歌を歌う練習をしているのと同じで、ただの自己満足な行為に留まっています。
オートバイの声を聞く会話を深めつつ、オートバイのライディングを上達させたいと願うならば、“キー”である一定の回転半径の円(サークル)を路面に描き、それに合わせた“サークル練習”を行ない、オートバイとライダーが一緒になって“キー”を覚える事が基本なのです。
最初は前後のブレーキを使って調整しても構いません。が、上達したいと願うならば、フロントブレーキだけを使った“ サークル練習 ”や 前後ブレーキを一切使わない“ サークル練習 ”がお勧めです。何故なら、旋回中のブレーキは単なる補正・ごまかし操作であり、タイヤへの荷重を意識して活かすコントロールの練習を阻害するからです。その上、正確なアクセルコントロールも身に付きますので、前後ブレーキ無しの“ サークル練習 ”へ辿りつく事を強く勧めます。
すると、きっとあなたは気付くでしょう。 右旋回か左旋回か一方の旋回では上手に出来るようになっでも、もう一方の旋回では同じ様に出来ない事に必ず気付きます。それに気付いた時が大きなチャンスです。 旋回の左右での違いは、オートバイの左右バランス・整体の狂いが最大の原因であって、決してライダーの責任だと思い込まないで下さい。思い込んで、それを補正する操作の練習をする事はライディングを悪くするだけでなく、オートバイに潜んでいるアンバランスを見逃して、オートバイライディングの楽しみを減らし、危険性のリスクを負いながら一般道を走行を強いられるからです。

GRAは、オートバイや運転の不安を取り除き、オートバイとの親密度を高める適切な整備と調整や、オートバイの能力を活かした適切で安全な運転方法為の情報発信を行なうと同時に、社会とのより良い関わり方を築くために、様々な情報発信や講習活動、啓発活動を続けていますので、安全で楽しいオートバイライフに関心がある方は、“クリニック”を受診される事をお勧めします。
また、受診が難しい方へはオンライン“クリニック”での対応を致しますので、不安な事や困っている事、知りたい事などをご連絡ください。
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