「 小林さん、いいバイクは無いですかぁ~? 」
これは4~5年前からの彼の決まり文句だった。
彼の言う “いいバイク” とは、恰好の良いバイクでも、馬力の高いバイクでも、女の子にモテる
バイクでもない。
走らせやすくて、速いタイムの残せるバイクの事だ。
その辺りのニュアンスは、14年以上のつきあいから充分に理解していた。
だから、いつも言っていた。
「 VTR, 250㏄ だけど、いいよぉ~ 」 と。

でも、いつも彼は本気にしな
かった。
彼とは冗談を言い合う仲なの
で、それも冗談として捉えて
いたのかも知れない。
だから、真剣に受け止めてもら
えるように言った。
「 いや、メーカーのトレーニングコースで、数ある教習用の車両の中では、僕が乗って最速だったよ 」 と。
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