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Common sense and insane

オートバイは、現在の形にまとまってから 100年余り経過して、人間の感性に従順な乗り物として広く愛されています。 しかし、その動作の解析は十分に尽くされているとは云えません。 私はサスペンションの理解を、電気回路との相似性を利用して深める事は有効だと考えています。

Motorcycles are widely loved as vehicles that are compliant with human sensibility, more than 100 years after they have been put together. However, it cannot be said that the analysis of its behavior has been exhausted. I think that it is effective to deepen the understanding of the suspension by using the similarity with the electric circuit.


  Similarity between suspension
   and electrical circuit




『 相似性との最初の出会い 』 First enconter with the Similarity

サスペンション好きな僕は、サスペンションを構成する各要素毎に仕様を変化させ、実際に走行した際に感じる性格との比較・理解がとても好きだ。

そんな僕が、以前から気になっていた解説記事があった。それは、サスペンションを電気回路に置き換えた記事だ。 一度読んだけど充分に理解が出来ず、手元に置いていたのに、いつか見当たらなくなっていた。確か、7~8年前の 三栄書房発刊「 Motor Fan illustrated 誌 」だった。





『 スプリング は コイル(インダクター)』   Spring is Inductor!


その解説記事の主な内容は、サスペンションを構成する 「スプリング」「ダンパー」を、電気回路の 「コイル」「コンデンサー」に置き換えたものだった。
通常の機械系記事では有り得ない内容だったが、各々の相似性に強く惹かれ、その上、当時の F1 レース車両で採用され始めていた 「イナーター」を電気回路の要素で説明してあったので、青天霹靂、とてもショックだった。

そんな状況だったので、改めて 学術系の資料を含めて調べ直してみると、比較的簡単に サスペンションと電気回路の相似性を使って解析した[ 解説図表 ]が見つかった。

GRA、サスペンションの解析と電気回路の解析の相関性を示す図表





『 相似する各要素 』 Similarity of each element

図表の左側が “ 機械系(Mechanical) ” 要素 で、右側に 相当する “ 電気系(Electrical) ” 要素 をまとめてある。 “ 機械系 ” は、上から 「 スプリング 」、「 イナーター 」、「 ダンパー 」で、右側の “ 電気系 ” では 「 コイル 」、「 抵抗 」、「 コンデンサー 」と、それぞれ関連相当の要素が左右に並んでいる。

各々の枠内に書かれている数式は、様式が一定していない所もあって、少し分かり難い点もあるが、以下の様な内容だ。 “ 機械系 ” で言えば、「 イナーター 」が担当する “ 加速度 ” を時間で積分すれば 「 ダンパー 」が担当の “ 速度 ” になり、更に積分すれば 「 スプリング 」担当の “ 位置(距離)” を表している。

この説明を、「 スプリング 」と「 ダンパー 」の役割から言い換えると、サスペンションが作動した時には、ストロークした “ 距離 ” に応じて「スプリング」が能力を発揮して、ストロークの “ 速度 ” に応じて「ダンパー」が能力を発揮するという事を示していて、これは サスペンションの正しい解析だ。
では、「 イナーター 」の具体的な役割は、以下の様に考えている。






『 イナーターとは? 』 About the Inerter

ここで、多くの人には聞き慣れない言葉「 イナーター 」(inerter)について、採用されている F1レース車両の事情と一緒に、知っている範囲で説明しよう。

F1 レースで使用される車両は、1986年以降、グランドエフェクトと呼ぶ車体下部を流れる外気を巧みに利用する仕組みが一般的になり、年々 その効果を高めていった結果、ダウンフォースと呼ぶ、車体を下向きに抑える力が増し、コーナリング速度を高めていった。 すると、従来のままのサスペンションのままでは、ダウンフォースが強大になった影響で、サスペンションとして機能や規則で決められたロードクリアランス(路面と車体との最低間隔)を保持する事が難しくなったので、2010年頃から「イナーター」が導入されるようになったもの。

そこで、サスペンションが路面やコーナリングに応じてストロークする際、そのストロークが 「伸び」から「縮み」に転じる場面(その逆の場面も同じ)、ストローク速度は 0 となる場面、ストロークさせようとする “加速度” が最大になる事に目を付けて、その “加速度” を制御して、強大なダウンフォースでも対応するサスペンションへと機能を高めたもの。
ただ、現行の「イナーター」のシステム(機構)は限定的な条件に対応してものなので、一般車などへの転用はなされていない様子という事だ。

ほぼ、この説明で間違い無いと思うけど、誤りがあれば、是非、ご指摘願を下さい。
  
GRA、サスペンションと電気回路の相関性





『 どなたか、ご教示を 』 I'm looking for more detailed analysis

以上の通り、サスペンションと電気回路の相似性を考え、電気回路では広く使われている「コンデンサー(キャパシター)」の役割をサスペンションにも当てはめて、「イナーター」が発想された事までは理解できる。 また、それと同様に、最適な スプリングの仕様(スプリングレート等)や、最適な ダンパーの仕様(ダンピングレート等)は、電気回路での制御・整流の考え方を応用すれば、より理論的で明快な最適解を幾つか導き出せる可能性がある事も理解できる。

ただ、“ 電気系 ” も同様に考えれば、「 電流 」を時間で積分して 「 電荷量 」になり、更に積分して 「 電力量 」になると言う事か?
ここらが、未だ少し理解が出来ていない。

誰か、ご教示戴ける人がいれば、是非、教えて下さい。








解説記事と画像 :小林 裕之
  
Texts and images : Hiroyuki Kobayashi




GRA、サスペンションと電気回路の相関性





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