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2020年 3月27日 開催
  “ 妖怪ガレージ 持込み企画”

「 新車の整体コース、燃費まで向上! 」


開催日

2020年 2月 27日 (木)

開催場所 妖怪ガレージ (神戸市)



    【 バイクは新車がベストな状態ですか? という質問を受けて、
    決してベストな状態でない事を説明して、“ 妖怪ガレージ・持ち込み企画 ”
    で「整体コース」を行なったところ、燃費向上まで実現した報告です


        ※ 受けた質問と回答の内容は、上の画像をクリックしてご覧ください


   
         
『 妖怪ガレージ・持ち込み企画とは?

“ 妖怪ガレージ・持ち込み企画 ”とは、代表・小林の整備専用ガレージを利用して、希望する方のオートバイを、オーナーの要望に合わせて徹底的に精緻な整備を、オーナーの理解と作業で実現する、本格的な実践整備を行なうイベントです。

今回の要望は、「バイクは新車がベストな状態ですか?」という疑問から、新車を本来の状態へ正しく整備する事になり、「整体コース」(簡易版)を行ない、そのコースの主な内容は下記の通りです。

妖怪ガレージ・持ち込み企画 「整体コース」 メニュー   
   


『 実際に行なった主な整備内容は?

上の表に記載した通り、オートバイの整備で最も敏感な部位の順番に進めました。
 
  
1. フロントサスペンション


フロントサスペンションを固定しているボルトを一旦緩めて、組立時に加わったままのストレスを取り除き、次にタイヤを接地させて荷重を掛けたままフロントフォークの整列をとり、固定ボルトを重要な順番に指定トルクで締め付けていきました。

妖怪ガレージ・持ち込み企画 20200227_1

その途中、オーナーさんと色々な会話をする中で、「では、ついでですから、一緒にやってしまいましょう」と、フロントホイールを外し、ベアリング と グリース、オイルシール、アクスルカラーの状態確認と整備を行なう事になりました。

ほぼ新車状態で、それらの箇所の確認方法は オーナーさんも関心を持ってくれたのですが、ベアリングは圧入圧力が高過ぎて抵抗感が強く、グリースは最小限しか塗布されておらずカラーにはオイルシールとの接触で明確な条痕があったのをオーナーさんに確認して貰えました。
カラーが既に条痕摩耗してしまっている事は残念でしたが、オイルシールのリップ部の摩耗は軽微だったので、オーナーさんにベアリングに摺動抵抗とリップ部の確認をしてもらって、内部のグリースの交換と補填給脂、リップ部への給脂を行なってもらって作業完了です。
 
( ※ 後になって思い返せば、寒い時期ですから、ホイールをホットガンで温めてからベアリングを少し押してやれば解決したな!と少し後悔しています、今度またやりましょう)

ホイールを外したのなら、当然のこと、ブレーキキャリパーの整備も追加で行なう事になり、オーナーさんに作業手順を説明して、ブレーキピストンの清掃と給脂、そしてシールへの潤滑までほぼ全てをこなしてもらいました。
本来、ブレーキキャリパーは 走行 1.000 〜 2.000 q 以内毎に整備してあげれば、ピストンに付く汚れもウエスの乾拭きで簡単に落とせ、ゴム製シールの摩耗も防げ、いつまでも長持ちするもの。それを行なわないから、汚れの固着でピストンとシールを傷め、汚れ除去用の洗剤やスプレークリーナーでシールや本体に悪影響を与えている例が多過ぎます。困ったものです。

妖怪ガレージ・持ち込み企画 20200227_2
  
  
  
  
2. エンジンマウント

多くのライダーや整備メカニックの人でさえ、最も関心が無い作業ですが、一番大きくて思い部品・エンジンが 誤った方法で車体に固定されてい事を知れば、少しは考え方を変えるでしょう。

オートバイの製造ラインは時間短縮が常に大きな命題ですから、フレームにエンジンを固定する作業方法は効率よく行なえる方法で、それは走行状態を想定した固定方法でない事が殆どです。その上、固定用のマウントボルトには重要度に合わせて締め付ける順番があり、車体を直立させてタイヤを接地させた状態で適切に締め付ける事が大切ですが、それは実現されていません。

オーナーさんの感想文に書かれていますが、車体直立状態にしてエンジンマウントボルトを一旦全てを緩める作業をしたところ、明らかに 100 Nmレベルの オーバートルクで締め付けられている事が確認できました。 指定トルク値は 55 〜 60 Nm だというのにです。

今回は、一旦緩めた後、エンジン本体のフレームへの“座り”を整える為、オーナーさんにゴムハンパーでエンジンの様々な個所に衝撃を与える作業を依頼した後、指定トルクで重要度の順に締め付けて完了です。

( ※ ここまでで、午前中の作業を一旦終了し、昼食後にオーナー試乗の為にガレージ内を移動させた時、その 2〜3 m の移動でもフロント周りからストレスが取れ、一気に軽快になっている事を実感、 詳しくは オーナーさんの感想文で )
  
  
  
  
3. リアサスペンション

フロントサスペンションと同様に、固定しているボルトを全て一旦緩めて、ボルトの劣化や汚損は無い新車故にボルトのクリーニングも無く、フロントと同様にタイヤを接地させ荷重を掛けた状態で、重要な順番に固定ボルトを指定トルクで締め付けていくという基本的な整備。

面白いのは、重要度の順番を最初にオーナーに質問した時です。「ふ〜ん、それで良いですか? では、そうしましょうか」と問答を繰り返したのですが、初めての人には試行錯誤した経験は無いので無理もない事です。

ここでも、締め付けトルクのバラつきを感じた以外に、製造ラインの制限により正しく荷重を掛けた走行状態で固定されていない事が手で感じられ、オーナーも試走で違いを感じた様です。
  
     
 
  
4. 適正チェーン調整

新車で販売されている状態から幾つかある問題点の一つがチェーンの遊び調整です。というのも、新車で販売されている時からチェーンの遊びが無い状態の車両を見掛ける事は少なくないからです。

そもそも、サービスマニュアルにさえ適正チェーンの遊び調整については、50年前のマニュアルと変わらない様な大ざっぱな表現でしか指示していないので、整備メカニックはおろか製造ラインの組立工の人でも適正なチェーン調整を知らずに組み立てている現状です。チェーンの伸びが早く頻繁な調整が欠かせなかった当時であれば、「遊びが多くなり過ぎると危険ですから調整します」の文言で良かったのかも知れませんが、その都市伝説めいた意識だけが独り歩きして、チェーンの遊びが充分に無い為に、リアタイヤのグリップを失いかねない安定性の車両が多過ぎる事は改める必要があります。

という事で、適正チェーン調整の方法はマニュアルの指示を忘れる事から始めて、ドライブスプロケットとスインアームピポット(軸)、そしてリアホイールアクスル(車軸)が一直線に並ぶ様にスイングアームの角度を調整します。(この調整は別の機会に詳しく説明します)

妖怪ガレージ・持ち込み企画 20200227_3   
その状態で、チェーンの前後中央部での遊びをチェックしました。チェーンは片伸びする事もありますので、時々タイヤを手で回してチェーンの張り過ぎず且つゆる過ぎない様に、スイングアーム左側についているチェーンアジャスターでしました。
 
今回は、チェーンの遊びは若干多目だったので少し少なくなる様にしてもらいました。荷物を積む事のあるオーナーさん、最初はリアが下がった時の事を心配していましたが、これでどんな時でも最適なチェーンの遊びになる事を納得してもらえました。
  
( ※ 当日、オーナーさんへの説明は失念しましたが、適正チェーン調整をした後、車両をセンタースタンドかリアスタンドで直立させた状態で、チェーンの前後中央部を指で軽く下に押しながらスイングアームとの間隔をメジャーで計測して記録しておけば、次からは適正チェーン調整が簡単にできます )
( ※ 本来ならば、車両メーカーはその状態での数値をマニュアルに記載するべきでしょう )  
  
  
  
5. 前後タイヤ整列調整

この作業は、前後のタイヤを一直線に正しく整列させる作業ですが、最も馴染みの無い作業項目だったのでしょう、オーナーさんの理解に一番時間が掛かった作業でした。それでも、オーナーさん自身で納得される迄は作業は始めませんでした。

この調整作業は、前後タイヤに“妖怪棒”と呼んでいる整列用ゲージを装着して、その前後ゲージ間の隙間を左右で比較するという簡単なもので、オーナーさん自身に整列の確認とスイングアーム右側についているチェーンアジャスターの調整してもらい、最後にリアホイールアクスルを車両前方向へ押さえつけた状態で指定トルクで締めて作業完了でした。

妖怪ガレージ・持ち込み企画 20200227_4
  
( ※ この作業についても、別の機会に改めて解説を行ないます )




『 作業終了後、試走結果は?

新車に限らず、殆どの車両で整体作業を行なった場合、特にフロントサスペンション周りの作業を行なうと、作業後にガレージ内を移動させるだけで笑ってしまう程に軽快になるものですが、今回はそれ以上に大きな変化もありました。
  
詳しくはオーナーさんの「感想文」でも書かれていますが、最後の試走の為にエンジンを掛けた瞬間にはっきりと気付きました、エンジン音が大きく変わったのです。低く安定した静かな音質へと変化したのです。もちろん、行なった作業ではエンジン関連は一切調整は行なっていませんので、変化した原因はエンジンマウント関連だと思われました。
 
また、オーナーさんの「感想文」でも報告があったように、燃費が大きく伸びた原因もエンジンマウントに関係している可能性があります。と言うのも、整体作業で車体全体のストレスを取り去っただけで、チェーンへの給脂やタイヤのエア圧調整は一切行なっていないからです。
それとも、軽快に走れる感覚がオートバイの操作にも良い影響を与えて、オーナーさんのストレスも取り去った影響も含まれるかも知れません。

どちらにしても、オーナーさんの理解と作業に合わせた整体コースでしたが、色々と勉強になる事も多かった“妖怪ガレージ・持ち込み企画”になりました。


インストラクター:小林 裕之
  
Instructor : Hiroyuki Kobayashi






オーナーさんの 「感想文」はコチラより

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